85杯目:『Le otto montagne』
2006年撮影のカイラス山
チベット自治区プラン県/椎名誠撮影(ニコンDf)
竹田椎名さんが薦めてくれた映画『帰れない山』を観てきました。
椎名どうだった?
竹田ファンタスティコ!
椎名監督の意図が直接的ではないのだけれど、きちんと溢れてくる素晴らしい作品だった。
竹田質問があるんです。
椎名なんでも聞いてくれ。
竹田作家であり映画監督でもある椎名誠が、この『帰れない山』(原題:『Le otto montagne』)に何を見たのか、ぜひ教えてください。
椎名何を見たのか、というと?
竹田あんまり内容に触れるわけにはいかない気もするので抽象的に挙げますが、家族、友人、男女といった人間関係なのか、あるいは山への情景、冒険、生き方、人生の着地点、いろいろなことが含まれていたので。
椎名うーん、それについてはビールでも飲みながらの、かなり長い話になってしまうな。
竹田どんと来いです。
椎名いや、本当に思うところがあったので映画の公式パンフレットに「山の中の心の理由」という長い話を書いたんだよ。
竹田おお、そうなんですか。チェックしてみます。
椎名君はどう見たの?
竹田うーん、難しいことを聞きますね。
椎名先に君が聞いてきたんだろう。
竹田僕の場合は親子の話を軸に考えて、省みるところが多かったかな。
椎名これ、まだ公開中でしょ?
竹田そうなんです。
椎名あんまり語るのも野暮だよな。
竹田そうすね。もう一度、もっと大きいスクリーンでモンテ・ローザの大自然を観てもいいかもしれない。
椎名「自然」という言葉を使うのはいつでも都会の人だ。
竹田名セリフをパクってる!
椎名ふふふ。確かに、映像の見せ方がとにかく秀逸だった。勝負できるカットがたくさんあったなあ。
竹田一方で細かな生活の描写も丁寧なので、その余白から時間の経過や登場人物の心情を解釈できた気がします。
椎名……ふーん。
竹田なんすか?
椎名君はバカじゃないんだね。
竹田バカだと思ってたんですか。
椎名だっていつも酒ばっかり飲んでるから。
竹田自己紹介ですか?
椎名バカめ。他にはどう感じた?
竹田僕ではなく、椎名さんへの質問なんですけれど、あるロケーションで地元の子どもたちがたくさん出てくるシーンがあるじゃないですか。
椎名うん、写真撮るところね。
竹田そうそう。すごいみんないい顔していて、おそらくあれは映画という巨大資本とは遠いところにいる子どもたちだと思うんです。現地の。椎名監督がモンゴルで映画を撮っていた時ってあんな感じだったのかな、と思って。
椎名厳密には違うんだけれど、でも、確かにあの雰囲気で様々なことを思い出したよ。いいシーンだった。
竹田あとは小ネタかもしれないですけれど、公式サイトをチェックしたらピエトロがスポンサーになっているのが粋で笑いました。
椎名どういうこと?
竹田主人公の名前がピエトロじゃないですか。福岡に同名のドレッシングやパスタソースを全国展開している会社があるんですよ。ドレッシングは間違いなく椎名さんも口にしたことはあると思いますよ。
椎名あー、そうそう。我々もピエトロには映画公開の時に沢山、お世話になっているんだ。地元公開の時のスポンサーになってくれた。恩のある会社です。
竹田おお、そうなんですね。すると今回の映画は配給会社が営業かけたんですかね。どういう経緯にしてもナイスアイデアっす。
椎名洒落の分かる面白い社長でした。映画を応援してくれる企業はどこも気概があっていいよなあ。
竹田椎名組もサントリーやエドウィンという心強いパートナーがいましたね。
椎名現場は結局、タフなのでジーンズとビールって最高の援軍ではあったな。スタッフもジーンズたくさんもらえて嬉しそうだった。
竹田映画の話は楽しいなあ。この名作と協賛企業に敬意を表して、近々、ピエトロを使ったサラダとパスタの宴を張りましょう。チーズも欠かせないっすね。もちろん酒はイタリアワイン。
椎名フルボディの赤がいいなあ。
椎名誠:バカ酒作家。自宅での黒ビールブームはしばらく続きそうだ。
竹田聡一郎:フリーランスのライター。夏に向けて自宅でカイピリーニャ。