67杯目:卯年もよろしくお願いします
塩と昆布と鷹の爪だけで漬ける。お手軽だ
長野県飯山市/竹田聡一郎撮影
(“チェキ” instax mini 8)
竹田 あけましておめでとうございます。
椎名 おめでとうございます。
竹田 年末年始、何してたんですか?
椎名 暮れも正月も関係ないよ。原稿を書いていた。
竹田 勤勉! 飲み納めとか2年乾杯とかお屠蘇とか樽酒とかいろいろあるでしょう。
椎名 酒ばっかりじゃないか。でもずっと赤ワインを飲んでたな。
竹田 ハイカラ!
椎名 娘の葉が帰省してたんだよ。帰国前から酒類をいろいろ手配していて、それを飲んでた。
竹田 おお、ニューヨークから。おかえりなさい。そりゃあ、飲みますわな。
椎名 いつもより多めに飲んでおります。
竹田 お、シーナ之助。つまみ方面はどうだったんですか?
椎名 鍋ものが多かったね。コロッケも食べたな。
竹田 暴飲暴食だ。ちょうど年末年始に『漂流者は何を食べていたか』(新潮選書)を読んでいたんですが、対極にある。
椎名 おもしろいだろ、あれ。
竹田 そうなんです。面白いんです。シロクマのステーキとか光るモンガラの話がとくにすごい。でも僕も年末年始ですき焼きとか雑煮とか贅沢な食事をしながら読んでいたので、なんだか罪悪感がありました。
椎名 ははは。
竹田 あとは『すばらしい黄金の暗闇世界』(新潮文庫)も一気読みしました。
椎名 あそこで紹介した『バチ抜け地獄』(つり人社)は怖いだろう。
竹田 やめてください。食欲なくなる。とにかく地底に行ったり宇宙に行ったり大草原を思ったり漂流したり、忙しい年末年始でしたわ。
椎名 楽しそうじゃないか。俺はテレビが壊滅的にくだらなかったので映画を観ていた。
竹田 特に民放はくだらないですなあ。
椎名 その中でもひどいのが「警察24時」みたいなやつ。
竹田 ああ、ありますね。密着実録最前線! みたいな。
椎名 どっかの県警の交通機動隊が交通違反の多い場所で潜んで捕まえるんだぜ。あんなにひどいことはない。
竹田 確かに。スピード違反をしたら捕まえるのはいいとしても、大切なのはスピードを出さないように未然に防ぐ対策ですからね。
椎名 夜の繁華街をパトカーで流して「なんとか巡査長の目はトラブルを見逃さない」とか、厳かなナレーションが入るんだよな。
竹田 文句言いながら、けっこう見てるじゃないすか。
椎名 そうなんだよ。バカバカしい、と言いながら見てしまう自分が悲しい。
竹田 まあ、夜の繁華街なんて常にトラブルはあるだろうし。
椎名 そうなんだよ。本当に24時のノンフィクションをやるなら「なんと、酒気帯び運転をしているのは現役の警察官だった」くらいのことはやってほしい。
竹田 あれはノンフィクションというより警察の広報番組と認識すべきですよ。というか見なくていいのでは。
椎名 そうだよなあ。正月から怒ってしまった。
竹田 でも、その怒りやいちゃもんってシーナ節の原点のひとつかもしれない。そういうエッセイは今年も読みたいです。
椎名 偏屈じいちゃんみたいで嫌だなあ。
竹田 ……お言葉ですが、もう既に……。
椎名 ん?
竹田 いや、なんでもないです。関係ないですが、年末に野沢温泉に行ってきて、野沢菜を仕込んでみたんです。生まれて初めて自分で漬けました。
椎名 お、持ってきてくれよ。
竹田 了解です。本年もよく飲み遊びましょう。
椎名 そうだな。警察24時を見るのはやめよう。
竹田 僕は見てないっす。でも椎名さん、やってると見ちゃう気がしますけど。
椎名誠:旅するバカ酒作家。2023年も元気に飲めればそれでいい。
竹田聡一郎:旅するフリーライター。温泉とビールを求めて北へ向かいたい。