66杯目:サラバ2022年

64杯目
10月に行った奥会津
福島県金山町/竹田聡一郎撮影
(“チェキ” instax mini 8)
 
 

竹田 さてこの「最近のシーナ」の更新も2022年最後になりました。

椎名 もう60回も連載しているんだね。

竹田 塵も積もればなんとやらです。恒例の1年振り返りをやりましょう。

椎名 去年もやったんだっけ。

竹田 はい。18杯目の「回顧する2021年」でやったのですが、なんせ暗いニュースばかりで。

椎名 そうかあ。でも今年も変わらないんじゃないの?

竹田 ううむ、確かに。でも、いきなり僕のことで恐縮なんですが、春が終わるまでは北京冬季五輪の関係でかなりバタバタしておりまして。

椎名 そうか、カーリングか。テレビでけっこう見てたよ。面白かった。

竹田 いろいろな方から「記事を読んだよ」と連絡をいただき励みになりました。

椎名 テレビにも出たと聞いたぞ。

竹田 おお、なんで知ってるんだ。ちょっとだけですけどね。しかしテレビで自分のニタニタした顔を見るくらいの苦痛はないっすね。気持ち悪かった、あいつ。

椎名 ともあれ、いい具合にはじまったんだな、君の2022年は。

竹田 椎名さんの2022年序盤はどうだったんですか?

椎名 あんまり覚えてないけれど、いいイメージはないなあ。

竹田 そうなんです。集英社の日記文学『失踪願望。』を読み返すとですね、2月に西村賢太さん、3月には野田知佑さん、訃報が続きました。戦争もはじまってしまいました。

椎名 そうだったかあ。嫌な冬だったなあ。

竹田 一方でコロナの感染状況が落ち着き、というか慣れたのですかね。春になると少しずつ社会も動き出し、5月には仙台文学館でシーナ展が開催されました。

椎名 そうか、あれは連休だっけ。久しぶりに東北に足を延ばした。

竹田 仙台でワインを盛岡でビールを宮古で日本酒を、よく飲みました。

椎名 出かける時はちょっと億劫だったりするんだけれど、行っちゃえば楽しいもんだよね。天気もずっと良かった。

竹田 5月にはニューヨークから葉さんが帰省して、素麺大会もやっています。

椎名 おお、そうかそうか。春から夏にかけてはよい季節だった。我が家の素麺大会は世界一だと思う。

竹田 そこでお願いがあるんです。

椎名 なんだい?

竹田 その素麺、食べたいんですよ。厚かましい僕でもさすがに家族団欒に入っていけませんので、一枝さんに具材、あとは出汁のレシピを公開してもらえないかと。夏になったら新宿で素麺大会やりたいんです。

椎名 ううむ、そういう話なら黒ビール3ダースとスコッチ1本がどうしても必要だと彼女は言ってたぞ。

竹田 一枝さんはそんな意地汚いこと言わないでしょう。どうして椎名さんが要求するんですか。

椎名 世の中はそうやって成り立っているのだよ。まあ考えておくよ。

竹田 頼みますよ。さて、話を戻します。椎名さんは晩夏から秋にかけて大三島や名古屋などに日帰りで行って、トークショーや講演をこなしています。

椎名 大三島は久しぶりに綺麗で平和な海を眺めた気がした。今年はそれなりにどこかに出かけていたんだね。

竹田 そうなんです。10月には只見線のイベントで奥会津、雑魚釣り隊の取材で八丈島、それぞれ2泊しています。奥会津ではどぶろくを、八丈島では島焼酎をやっつけました。

椎名 なんか酒飲んでばかりみたいじゃないか。あんな文化的な取材をしたとかこんな良い原稿を書いたとか紹介してくれよ。

竹田 だって実際、酒飲んでただけなんですよ。そういえば雑魚釣り隊の八丈島編の原稿、まだ書いてないらしいですね。担当の健太郎が静かに焦ってましたよ。

椎名 来週書くよ。

竹田 新年号の掲載なんですからダメですよ。いま書いてください。

椎名 はいはい。みなさま良いお年を。

 

椎名誠:旅するバカ酒作家。近著『失踪願望。』(集英社)が全国で好評発売中。

竹田聡一郎:旅する麦酒ライター。遠著『日々是蹴球』(講談社)がごく一部で好評発売中。

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