61杯目:フィッシュ&チップス沼

61杯目
川沿いの階段堤はとても居心地がよろしい
静岡県沼津市/竹田聡一郎撮影
(“チェキ” instax mini 8)
 
 

竹田 沼津に行ってきましたー。

椎名 なんでまた?

竹田 ビール好きの友人が数年前から「ベアード・ブルーイングがとにかくいいのだ。飲みなさい」と執拗に啓蒙してくるので、沼津にあるタップルームに行ってきたんです。

椎名 ビールのためにか。君も筋金入りだねえ。うまかったの?

竹田 それはもう。まず店の雰囲気が木を基調とした、いかにも「ビール小屋」という感じで良かったです。ロケーションも素晴らしかった。

椎名 漁港のほう?

竹田 まさに。魚市場の目の前。夜の海を眺めながらの沼津ラガーは格別ですわ。

椎名 いいではないか。ツマミはなんだった?

竹田 パブといえばフィッシュ&チップスでしょう。

椎名 うむ、そうか。

竹田 しかも沼津のアジを使ったフィッシュ&チップス。

椎名 はあはあ。

竹田 息が荒くなってきましたよ。ビネガーだけで十分、うまかったなあ。スタウトと合うんですわ。

椎名 沼津か。久しぶりに行ってもいいかもな。

竹田 ぜひ行きましょう、明日行きましょう。土地勘あるんですか?

椎名 菩提寺があるんだ。

竹田 ええ、知らなかった。

椎名 海から近い名刹だよ。参勤交代の時に大名が寄ったとか、そんな話を聞いたことがある。

竹田 そうか。ザ・東海道だもんなあ。じゃあ、昔から何度も通ってるんですね、沼津。

椎名 法事などが終わった後に寿司屋の座敷でビール飲むのが楽しみだった。なんていう名の店だったかなあ。

竹田 それは絶対に思い出してください。

椎名 頑張るよ。

竹田 そのパブもそうなんですけれど、沼津は飲食店が多くて、「お、ここ良さそうだな」というセンサーがよく働く土地でした。

椎名 そうかもね。チェーン店が少なくて、土地の人が頑張っているいい町だと思う。

竹田 商店街に公共のテーブルが置いてあったり、憩いの場所も多い。この写真の川沿いにもずっとウッドデスクとウッドチェアが点在していて、そこで昼時にお弁当を食べる人とか、鳶職人っぽいあんちゃんが川面を眺めながら一服していたりとか、なかなかいい光景なんすよ。

椎名 なんでも護岸工事ばっかりすればいいってもんじゃないけれど、そういう有効な整備ならいいよなあ。

竹田 まだ10月だったので僕も缶チューハイ買って月見酒しました。

椎名 近くで雑魚釣り隊のキャンプやったことあるよな?

竹田 ありますあります。『おれたちを笑うな!ーわしらは怪しい雑魚釣り隊』か『おれたちを笑え!わしらは怪しい雑魚釣り隊』(ともに小学館)のどっちかに収録されていると思うけれど。

椎名 これは笑っていいの? いけないの?

竹田 あなたがつけたタイトルでしょうが。

椎名 我ながらバカだなあ。

竹田 写真の川は狩野川といって、鮎の友釣り発祥の地という説があり、源流の天城山付近ではワサビの栽培が盛んです。

椎名 おお、天城越えしてきたのか。浄蓮の滝を通ってきたんだなあ。

竹田 天城越えかどうかは分かりませんが、椎名さんは演歌が好きですねえ。そういえば「わさび沢 隠れ経」っていう歌詞があります。

椎名 ほらみろ。

竹田 何が「ほらみろ」なんですか。とにかく雑魚釣りキャンプはこの狩野川河口の南側の浜でやりました。

椎名 流木がたくさんあっていい浜だったよね。

竹田 それこそ狩野川から天城越えして来た木じゃないのかな。

椎名 親切なおっちゃんが二人いたよね。

竹田 あー! そうそう。「お前ら焚き火してんのか」という第一声だったから怒られるのかなと思ったら、「たくさん流木あるから面白いよな。浜もきれいになるからじゃんじゃんやってくれ」って。しかも「ゴミは分別してくれれば明日の朝に捨ててやるから」と親切だった。

椎名 沼津はいいところだ。年明けに伊豆のほうで仕事があるので寄ってもいいなあ。

竹田 僕も行きます。寿司屋の名前、思い出しましたか?

椎名 行けばわかるさ。

 

椎名誠:旅するバカ酒作家。元楽天の嶋基宏捕手がヤクルトで引退していてさみしい。好きな選手だった。

竹田聡一郎:旅するフリーライター。新井新監督、よろしくお願いします。キャンプ行こうか迷ってます。

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