58杯目:いつもの島へ行ってきた(後編)

48杯目
わしらの今夜の寝床
東京都八丈町/竹田聡一郎撮影
(“チェキ” instax mini 8)
 
 

竹田 今週も雑魚釣り隊で八丈島です。

椎名 黄八丈、うまいなあ。

竹田 磯崎酒造は残念ながら蔵を閉じてしまいましたが、坂下酒造が後継という形で古酒を販売していましたが、それも売り切れたらおしまいらしいです。貴重ですなあ。うまいうまい。

椎名 この旅が(週刊)ポストにはいつ載る予定だっけ?

竹田 年末発売の新年号の予定らしいです。釣りや宴会の詳細はそっちを読んでいただくとして、前回は椎名さんと八丈島の長い付き合いを振り返りました。

椎名 おそらく50年を超える付き合いで、帰る場所くらいに感じているよ。

竹田 集英社『遺言未満、』には八丈島の海に海洋散骨してほしい、というくだりもありました。

椎名 八丈島にはその取材で行ったのが最後だったから2年ぶりに来たけれど、ここの海はいつも厳しくて激しいね。それがいいんだ。

竹田 そうなんですよね。いつも風があって波があって海らしい海というか、ずっと眺めていられる。

椎名 君は八丈島に最初に来たのはいつなの?

竹田 えーとですね。浮き球野球で来たのが最初ですね。きっと2004年です。

椎名 それなりに時間が経ってるのね。

竹田 おかげさまでそろそろ20年選手です。数えていないですけれど通算で10回は来ていると思います。カーナビなしで走り回れるようになりました。

椎名 中上級者くらいだね。

竹田 いやあ、まだまだっす。この前、はじめて中之郷の「むらた」で飲みましたし、「あそこ寿司」はまだ未訪です。深く広いスナック方面も未開拓な店が多いです。

椎名 「むらた」はカズとよく行ったなあ。なんでもうまいよな。あの店。

竹田 先月来た時、まさに「むらた」で飲んだんですよ。壁には椎名さんのでっかいサインがありました。

椎名 そうだっけ。何を食べたの?

竹田 海鮮から焼き鳥までほとんど暴飲暴食でしたが、尾長鯛の刺身とトビウオのさつま揚げが特においしかったです。あの味を思い出してビール飲めるレベル。

椎名 今回はキャンプだけど、居酒屋でしっかり飲む八丈島旅も悪くないんだよな。

竹田 そうなんですよ。この前は行きはレンタカーで帰りはタクシーだったので一晩、車を置かせてもらったんです。翌日、バスかなんかで取りにいけばいいやって思って。

椎名 ふんふん。

竹田 ビューホテルに泊まっていたんですが、寝覚めが良かったこともあって、ちょっと歩いてみたんです。

椎名 中之郷まで? かなり距離があるんじゃない? トンネルあるし。

竹田 そうなんです。為朝神社でお参りしてから、横間橋と逢坂橋を渡り、大坂トンネルまでずっと登り。いい運動になりました。晴天でずっと八丈小島が見えていて風もあって気持ちよかったですね。

椎名 昔はあのトンネルがなくて、島民は苦労したんだ。

竹田 民謡で難所だと歌われていたと聞きました。

椎名 八丈ショメ節かな。あれは即興で歌ったりもするから面白いよね。

竹田 ひょっとして『あやしい探検隊 焚火酔虎伝』(山と渓谷社)などで登場する、木村晋介先生の即興民謡と通じるものがあるんですかね。

椎名 ああ、そうかもしれないね。木村のほうが俺より島には通っていたから。あいつはそういうのを自己流でエンターテインメントにするのがうまいんだ。

竹田 芸達者ですもんねえ。ショメショメ。

椎名 結局、中之郷まで無事に辿り着いたの?

竹田 11kmを2時間半かけて踏破しました。ついでに藍ヶ江まで下りて足湯に浸かってきました。午前中からしっかり動いたので昼飯は「酒池肉林」のつけ麺大盛りをいただきました。

椎名 充実の旅じゃないか。君は旅をするのがうまいと思うよ。この調子でガシガシ進みなさい。

竹田 椎名さんに言われると素直に嬉しいです。僕は雑魚釣り隊の取材旅の前乗りでロケハンしたり、逆にみんなが帰ったあとに後泊して行けなかった店や場所に行くのが好きで、おかげさまで島などはだいぶ詳しくなりました。

椎名 八丈島を筆頭に、伊豆七島や佐渡島、伊江島や宮古島、いろいろ行ったもんなあ。

竹田 前乗りしていると、例えば、マキエイやタカは国際便で、三嶋は自分のハイエースで長駆、ショカツは夜行バスで、それぞれの交通で現地に徐々に集う感じが楽しかったっす。

椎名 雑魚釣り隊のオリジナル版(『わしらは怪しい雑魚釣り隊』マガジン・マガジン)の頃は、近場の海っぺりで竿出して焚き火して酒飲んでテントで寝るくらいの、どちらかといえば小規模キャンプだったのにいつの間にやら関西組や海外組まで生まれたもんなあ。

竹田 遠征も国内だけにとどまらず、済州島や台湾やバリ島まで行きました。『あやしい探検隊 済州島乱入』(KADOKAWA)を読み返したら、なんて贅沢な旅なんだとつくづく思いましたよ。

椎名 海外もかなり行ったもんな。どこへ行っても当地の酒を飲むだけなんだけど、面白かったよなあ。

竹田 椎名さん、まだまだガンガン行きましょう。

椎名 そうだね。雑魚釣り隊キャンプも2年ぶりだったけれど、やっぱりいいもんだね。前向きに検討しよう。

 

椎名誠:旅するバカ酒作家。ビール、ワイン、日本酒、ウイスキーなんでもござれ。

竹田聡一郎:旅するフリーライター。「椎名誠 旅する文学館」の館長。広島カープのファン。

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