48杯目:琉球のあいつ
羽田空港に向かっていると心が弾む
東京都大田区/竹田聡一郎撮影
(“チェキ” instax mini 8)
椎名 お、いい具合に焼けたな。
竹田 なんですか? トーストですか? サザエですか?
椎名 バカだなあ。君の肌だよ。
竹田 椎名さんこそいつも黒いじゃないすか。
椎名 俺は若い頃から「メラニン君」と呼ばれてたんだからな、なめんなよ。
竹田 別になめてはいません。
椎名 どっか行ってたの?
竹田 ちょいと南へ。ヤボ用があって。
椎名 やっぱり北へ向かうほうが演歌っぽくていいよな。「南へ」は爛れたイメージがある。
竹田 確かにサングラスかけてオリオンビール飲んでました。
椎名 けしからん。西澤に会った?
竹田 ガッツリ飲んできました。ご存知ない方も多いと思うので説明をはさみますが、西澤亨とは広告マンであって編集者であって、雑魚釣り隊の若頭。このサイトでは「海のむこうの怪しいモノモノ」を担当してくれていて、2019年に沖縄に移住して広告会社で勤務する夜の暴れん坊です。
椎名 うりずんあたりで飲んだの?
竹田 いや「水島宗三郎」というモツ鍋が看板メニューの良店でした。今度、行きましょう。
椎名 元気だった?
竹田 はい。相変わらず自分の話にコクコク頷きながらしこたま飲んでました。
椎名 あいつが移住してもう3年が経ったってこと?
竹田 早いですね。僕らにとっても変化だったので、当時はちょっとさみしかったです。ちょっとだけ。
椎名 でも、いい選択をしたんじゃないかな。東京で広告や出版を中心に経験を積んで、それを活かしながら自分の行きたい場所で過ごす。羨ましい。
竹田 椎名さんも移住願望を抱いたことはあったんですか?
椎名 あったよ。余市に別荘を持っていた時は「ゆくゆくはここに住むのもいいな」とは感じていた。
竹田 その願望はもうないんです?
椎名 あるようなないような。どっかにふっと消えちゃいたいような気持ちになることはあるけれどなあ。どうだろう。でも余市は冬が厳しすぎるよ。
竹田 積雪ってことですか?
椎名 それは大きな理由のひとつだね。買い物にいく度に除雪をする生活だもの。北海道の人は本当に強いんだなと尊敬している。
竹田 確かに。南が安易とは思わないですけれど、どこに住んでも向き不向きや相性はあるでしょうね。
椎名 その点、西澤は男らしいヤツだけれど、決して押し付けがましくないし、面倒なことは言い出さない。カラッとした人付き合いができるから、どこへ行ってもうまくやると思うな。
竹田 ちょっと褒めすぎじゃないですか?
椎名 そうか。じゃあ、そのモツ鍋屋で奢ってもらおう。
竹田 僕が行った翌週にドームが家族で行ったらしいです。
椎名 みんな西澤に会いたいのか。
竹田 我々からすると友人がいてくれるのは嬉しいですよね。出かけるきっかけにもなるし。酔っ払っていたので僕も正確には覚えていませんが「どこにいても好きに生きられるんだと、移住してそんなことにも気づいたよ」的なことを言っていて、それはそうだなーとちょっと思いました。決断するのは難しいだろうけれど、今は働き方も多様化してきましたし。
椎名 苦悩もあっただろうけどな。後輩にその背中を見せたかったのかな。
竹田 あの泥酔乱暴者がそこまで考えてるかなあ。
椎名 彼が東京に来る予定はないの?
竹田 秋に11年ぶりにJR只見線が開通するじゃないですか。
椎名 そうだね。俺も現地に行くかもしれない。
竹田 おお、そうですか。西澤先輩と話してて「縁のある土地だし、しばらく玉梨温泉にも入ってないから行くかあ!」と盛り上がりまして。温泉と日本酒への飢えだけは沖縄では満たされにくいのかもしれないですね。
椎名 そうか。じゃあ久しぶりに宴会だな。
竹田 そっすね。ちょっと座組みしますわ。
椎名 頼む。久しぶりに奥会津でカツ丼を食おう。
竹田 こぶし館! マニアックな。楽しみだなあ。
椎名誠: バカ旅サケ作家。最近、朝メシの重要性に気づいた。生野菜モリモリだかんな。
竹田聡一郎:スポーツ、旅などを中心に取材するフリーライター。カイピリーニャを飲みまくる夏。