『毎朝ちがう風景があった』
目黒 それでは、今回のテキストは『毎朝ちがう風景があった』です。夕刊フジに連載中の「街談巷語」(2018年5月〜2019年7月)を単行本化にあたり、大幅に再構成・加筆・修正したものと巻末にあります。新日本出版社から2019年12月に出た本です。帯に「作家デビュー40周年の年を締め括るカラーフォトエッセイ!」とあるんだけど、『さらば国分寺書店のオババ』が1979年だから、たしかに40周年だ。
椎名 早いな。
目黒 『こんな写真を撮ってきた』という本が2021年1月に出ていて、その巻末に「写真の本」という項目がある。そこにこの『毎朝ちがう風景があった』が入っているんだけど、これはどう見ても写真集じゃないよね。
椎名 そうかあ。
目黒 だって、これ、見て。文章がすごく多くて、写真は少ないよ。エッセイ集に写真をつけたという感じだよね。写真の多い順から、写真集、写文集、写真付きのエッセイ集と分類すれば、写真がいちばん少ないやつ。ま、いいか。ええと、内容にいきます。
椎名 いってくれよ。
目黒 ニシオンデンザメは時速5キロ、と出てくるんだけど、これは魚としては速いほうなの?
椎名 お前なあ、それは遅いよ。
目黒 どうしてそんなに遅いの?
椎名 でっかいんだよ。
目黒 どうして大きいの?
椎名 北の鮫だからな。
目黒 えっ、どういう意味?
椎名 北の海で育った魚は、成長が遅いというか、ゆっくり育つから大きくなるんだ。
目黒 へー、そうなんだ。あのさ、無知な質問で申し訳ないんだけど、日本近海にも鮫はいるの?
椎名 いっぱいいるよ。
目黒 怖いねえ。そういえば、この本の中にも鮫が餌物にくいつくところを海底で見ていた、と出てくるけど、怖くない?
椎名 シャークフーディングといって、鮫が食事するところを見せてくれるんだ。
目黒 見るって、こっちは檻かなんかに入っているの?
椎名 入ってないよ(笑)。
目黒 じゃあ、こっちのほうが美味しそうと襲ってきたらどうするんだよ。
椎名 来ないよ(笑)。だって餌がいっぱいあるんだから、そっちに行くだろ。
目黒 ふーん。あと、欧米には居酒屋がほとんどない、とこの本の中で書いているけど、イギリスのパブは居酒屋ではないの? つまみというか、軽食はあるぜ。
椎名 あれは居酒屋ではないよ。むしろ、バーに近い。
目黒 じゃあ、居酒屋があるのは日本だけ?
椎名 日本独自のものだね。
目黒 話がどんどん飛んでいくけど、世界三大ガッカリの一つが、ナイアガラの滝だ、と出てくるんだけど、あと二つはなに? ここでは書いてないんだ。
椎名 こういうのは、そのときで変わってくるから、残りの二つがなんであってもいいんだよ。
目黒 永遠のワーストスリーじゃなくてもいいから、そのときの椎名が選ぶワーストスリーを知りたい。
椎名 そんなものかねえ。
(この対談は2022年6月14日に行われました)
<<<『おれたちを齧るな!わしらは怪しい雑魚釣り隊』 『おなかがすいたハラペコだ。③ あっ、ごはん炊くの忘れてた!』>>>
書籍情報はこちら » 毎朝ちがう風景があった