42杯目:カレーよもやま話

42杯目

期間限定「マッサマンカレー」の復活を望む
東京都新宿区/竹田聡一郎撮影
(“チェキ” instax mini 8)
 
 

竹田 1月22日はカレーの日です。

椎名 ふーん。

竹田 学校給食について協議する全国学校栄養士協議会なるものが1982年、栄養と人気があったカレーを1月22日の給食メニューに推進したことにちなんでいるそうです。

椎名 でもよう、今は6月だぜ。

竹田 まあ、いいじゃないですか。椎名さんはどんなカレーが好きなんですか?

椎名 普通で王道のいわゆる、「お母さんカレー」だなあ。肉はなんでもいいけれど、たまねぎ、にんじん、じゃがいもゴロゴロ。

竹田 なるほど。市販ルーで作るカレーは「箱に書いてあるレシピどおり作るのがいちばんうまい説」は根強いですからね。

椎名 よそった時に素材の原型が分かるのが理想だね。

竹田 香辛料をたくさん使う、スパイスカレーはお好きですか?

椎名 あれはあれで好きですよ。そういえば昔、カレーの本場で日本のお母さんカレーを作って現地のお母さんと対決するという取材をしたことがあったな。

竹田 ん?『インドでわしも考えた』(小学館)ですか?

椎名 いや、インドじゃないね。スリランカだった。

竹田 そしたらきっとあや探シリーズですね。『あやしい探検隊 不思議島へ行く』(KADOKAWA)だ。

椎名 そうそう。日本からコシヒカリとカレールーを持ち込んで。

竹田 文藝春秋の『海浜棒球始末記』などもそうですけれど、椎名さんって押しかけ乱入、勝手に道場破り、自己都合殴り込み的な取材が多いですよね。

椎名 うむ、テキが油断しているうちに進まなければならない。

竹田 世界的にカレーはインドやスリランカが本場ですが、日本でも国民食です。負けられない一戦ではありますな。

椎名 国家の威信をかけた殴り込みだ。

竹田 野菜は持ち込んでないんですか?

椎名 米とルー以外は現地の市場で買った。たまねぎ、にんじん、じゃがいもと、あとはサバ。

竹田 肉じゃないんですね。宗教的な理由もあるのかな。

椎名 そうだった気がする。サバは骨をしっかり外して煮込みのような感じで使った。

竹田 それはそれでうまそうだ。

椎名 うん、いい仕事してくれて予想通りの味になった。

竹田 テキはどんなカレーを?

椎名 スパイスを20種類くらい使った本格カレーだったなあ。数時間待たされた記憶がある。でもやっぱりうまかった。

竹田 日本代表・サバカレーの評価はどうだったんですか?

椎名 友好的には食べられていたんだけれど、米が不評だった。

竹田 柔らかさと粘りが特徴的な日本米は海外では受け入れられないことが多いですよね。

椎名 向こうの人は手で食べたりするから、くっついて食べにくいという理由もある。

竹田 ふむふむ。勝敗の行方は?

椎名 どうだっけな。

竹田 まあ、ネタバレになってしまうし、これくらいにしておきましょうか。

椎名 でもやっぱり、日本で愛されるカレーライスとスリランカの日常食のカレーは、関連はあるけれど別の料理だよね。同門対決かつ、異種格闘技戦でもあった。

竹田 腹減ってきた。

椎名 この写真のカレーは美味しいの?

竹田 美味しいっす。マッサマンカレー。

椎名 タイのカレーだっけ。

竹田 そうです。じゃがいもと鶏肉をココナツミルクなどを使って煮込んだもので、カレーの王様、世界一のカレーなどと呼ばれたりもしてます。

椎名 どこで食べたの?

竹田 松屋っす。

椎名 え、牛丼の?

竹田 そうです。松屋はカレーにも力を入れてるんですよ。「ごろごろ煮込みチキンカレー」を筆頭に「フレッシュトマトカレー」、カレーではないけれど、ジョージア料理の「シュクメルリ」などを限定メニューで出したり、いろいろ攻めてます。

椎名 ふーん、うまそうだね。今度、連れてってくれよ。

竹田 もちろんです。いつもビールを飲ませてもらっているので、たまにはぼくがオゴります。

椎名 太っ腹だね。

竹田 何杯でも食ってください。そして2軒目でウイスキーおごってください。

椎名 わかった。

竹田 うししし。

 

椎名誠: バカ旅サケ作家。6月は蒸し暑いからビールがことさらうまいんだ。

竹田聡一郎:フリーライター。鰻と河豚を緊張せず食べにいける身分になりたい。

旅する文学館 ホームへ