41杯目:78歳になったシーナは稲庭うどんをすすった
東京都中野区/家族撮影
(“チェキ” instax mini 90 ネオクラシック)
竹田 誕生日おめでとうございます。
椎名 ありがとう。
竹田 年甲斐もない写真を撮られてますね。
椎名 そう言うんじゃありません。孫が用意してくれたから、断れなかった。
竹田 優しいじいじだ。お祝いディナーみたいなものをしたんですか?
椎名 息子一家が夕飯後にケーキを用意してくれたんだ。
竹田 うまそうですね。
椎名 フルーツケーキ。美味しかったよ。
竹田 宴会方面はどうしたんですか?
椎名 その前日に雑魚釣り隊と担当編集者、数人で池林房で慎ましくマグロを食べた。
竹田 あの店、最近、すごい混んでません?
椎名 トクヤが日曜の早い時間から開けてくれたから大丈夫だったけど、夕方から混んできた。久しぶりに飲んだけれど、やっぱりあそこの生ビールはうまいなあ。
竹田 泡からしっかりうまいんですよね。ただ、最近、あそこではみんなキンキンに冷やしたウイスキーと強炭酸で作る、「氷点ハイボール」を飲んでます。
椎名 ああ、それも飲んだよ。ギンギンでうまかった。
竹田 でもあれ、ちょっと濃くないすか?
椎名 そうか? あんまり気にならなかった。生ビールと交互に飲んだから大丈夫。
竹田 何が大丈夫か理解できません。椎名さん、酒ばっか飲んで食わないから、内臓おかしくしますよ。ちゃんと水飲んだり、メシ食ったりしてくださいね。
椎名 でもその日は稲庭うどん食ったからな、なめんなよ。
竹田 威張るようなことじゃないけれど、確かにあそこは稲庭うどんもうまい。
椎名 稲庭って日本三大うどんだっけ?
竹田 それについては一家言ありまして。
椎名 うかがいましょう。
竹田 一般的には讃岐、稲庭、水沢、とされているんです。
椎名 讃岐は大横綱だよね。
竹田 そうなんです。最強のコシを誇る手打ち麺にいりこ風味がしっかり効いて、嗚呼!(立ち上がる)
椎名 落ち着きなさい。
竹田 失礼しました。でも稲庭うどんって基本的に乾麺が中心なんですよね。
椎名 そうかもしれない。秋田で行っても店で食べるというより、人にお土産としてもらったりすることのほうが多いよね。
竹田 水沢も榛名山系の湧水を使った手打ちがメインなんです。三大うどんは乾麺と手打ちの生麺が混在しているのが現状です。
椎名 手打ちと乾麺と分けろ、ということかい?
竹田 Exactly! 三大手打ちうどんは、讃岐が軸でいいんですけれど、うどん発祥の地とされる博多のやわうま系うどん、前述の水沢、甲斐名産のほうとう、西日本のうどんのいいところを凝縮させた大阪うどん、名古屋のきしめんあたりはエントリーさせたいですな。
椎名 個性派揃いで、どれも好きだなあ。
竹田 対して、というより並んでと言うべきか。三大乾麺は三大手延べうどんと言ってもいいかもしれません。稲庭、氷見を中心に、最近は北海道の下川町という町が「日本最北の手延べ麺の里」と呼ばれております。北海道産小麦100%使用の実力は確かです。
椎名 ふんふん、くわしいなあ。
竹田 そして椎名さんが好きな五島うどん。
椎名 五島! グツグツに煮立ったうどんをあごだしと生卵にからめて一気に……嗚呼!(立ち上がる)
竹田 落ち着いてください。
椎名 失礼。でも地獄炊きは本当にうまいんだよお。
竹田 椎名さんの誕生日からだいぶ脱線しましたけれど、やっぱりご当地麺は奥深くて楽しいっすね。
椎名 うん、これらの勝負はいずれ決着をつけよう。
竹田 『すすれ! 麺の甲子園』(新潮社)が2010年の発売だから、かなり国内麺情勢は変わっているはず。令和版などを企画したいっすね。
椎名 いいなあ、それ。
竹田 個人的には「ウエスト」、「山田うどん」、「資さんうどん」、「味の民芸」などのうどんチェーンの個性に迫りたいのと、ご当地うどんで言えば宮崎の釜揚げはもっと評価高くてもいいと思うのです。
椎名 いい意見だ。世界うどんサミットがあったら君は呼ばれるであろう。
竹田 ぜひ続編をやりましょう。最後になってしまいましたが、誕生日当日の6月14日は何してたんですか?
椎名 目黒(考二)に会った。2年ぶりだ。
竹田 おお、目黒さん。その話もいずれ。「シーナ、お誕生日おめでとう」って言ってくれました?
椎名 言うわけないだろ。
竹田 ですよね。
椎名誠: バカ旅サケ作家。6月は蒸し暑いからビールがことさらうまいんだ。
竹田聡一郎:フリーライター。鰻と河豚を緊張せず食べにいける身分になりたい。