39杯目:おれたちを齧るな!
太陽先輩はこの春、満月デビューを果たした
東京都三鷹市/竹田聡一郎撮影
(“チェキ” instax mini 8)
椎名 雑魚釣り隊の新しい文庫は届いた?
竹田 うす、小学館「週刊ポスト」のケンタローが送ってくれました。『おれたちを齧るな! わしらは怪しい雑魚釣り隊』。陸前高田に新島に本栖湖に宮崎。極め付けは能登半島キャンプでテレビにまで出てしまうとは。
椎名 あっちこっち行ったなあ。バカだなあ。
竹田 個人的にもっともバカらしいと感じたのは序盤の「雑魚釣りステークス」ですね。
椎名 あれは競馬好きの西澤とケンタローがやりたいだけの企画だったからな。
竹田 とはいえ、馬名とかくだらないけれどセンスがあって面白い。真剣に遊ぶというおれたちらしい回ではありました。
椎名 都内とか千葉とか近くでも遊んでるんだよな。
竹田 そうなんですよ。専門用語ばかり使って沖で大物狙う釣り部の連中が跋扈する昨今、雑魚釣り隊の原点という感じで、堤防カラアゲの回とか参加していて楽しかったです。
椎名 今回、太陽が解説を書いてくれたんだ。
竹田 長崎のバカ兄弟の兄のほうですね。兄の橋口太陽と弟の童夢。
椎名 どっちのほうが賢いの?
竹田 それは永遠のテーマです。どんぐりの背比べというか、イソメとゴカイというか。
椎名 なんだかんだ仲は良いよな。
竹田 そうですね。去年は兄がコロナに罹って、回復した頃に弟が罹ってました。あとは「池林房」や「海森」あたりで飲んでると、よく「さっき橋口さんいましたよ」と教えてくれるお客さんがいるんですよ。
椎名 そうかあ。あいつらよく行ってるんだな。
竹田 そういう時は「どっちですか? 太陽ですか童夢ですか?」と聞くんですけれど、だいたいの人は「バカっぽいほうです」とか「愛想だけは良いほうです」とか「女好きのほうです」とか言うんですけれど、その情報では判別できない。
椎名 不毛なやりとりだなあ。
竹田 文庫の話ですが、そのバカ兄貴の解説を読んだ感想としてはどうだったんですか?
椎名 よく書けてたよ。太陽の優しい人柄が出ている。
竹田 そうですね。彼にしか書けない文章ではありますね。
椎名 最初は全然、書けなかったと聞いたぞ。
竹田 そうですね。ケンタローと僕を焼き鳥に呼び出して「書けない。スランプだ」とかワケわからんことを宣っていましたから、おれたちは無視して梅しそ巻きを肴にハイボールをガンガンやりました。
椎名 相談に乗ってやれよ。
竹田 その後、犀門で飲んでたら椎名さんに会えて「なんでも書いていいぞ。思ったこと書けよ」という一言でスランプを脱したと聞きました。なんなんですかね、あの人。
椎名 君は太陽の解説を読んでどういう感想を持ったの?
竹田 楽しく読んだのですが、あのバカ兄弟は隊結成の2003年から20年ずっといるんだから、シーナ隊長の暴君っぷりにも言及してほしくもありました。
椎名 書かないってことは優しい隊長だってことだよ。
竹田 うーん、この話はいずれまたしたいけれど、酒とかマグロとかのことになると椎名さんは本当に怖いです。目が血走ってるんだよなあ。
椎名 おれは血合いも嫌いじゃないんだよな。
竹田 違う話になってますね。その太陽先輩なんですが、発売日に笹塚の紀伊國屋書店に行ったらしいのです。
椎名 なんで?
竹田 自分が書いた解説がちゃんと載ってるか確かめに行ったんじゃないですか?気持ちは理解できます。
椎名 そんなもんか。
竹田 文庫新刊のコーナーを中心に徘徊して、売り場の書店員さんに「この本の解説書いてるの私なんですよね」と言おうか迷って、結局、言えなかったそうです。これも気持ちは分かるなあ。
椎名 言えば面白かったのに。
竹田 その顛末も含め、文庫化発売を記念して近々、新宿あたりで飲みましょう。雑魚釣り隊もコロナで丸1年、休んでますから。
椎名 そうだな。夏から秋にかけて島に行きたいな。
椎名誠: バカ旅サケ作家。6月は蒸し暑いからビールがことさらうまいんだ。
竹田聡一郎:フリーライター。鰻と河豚を緊張せず食べにいける身分になりたい。