出版社:新潮社

文庫

発行年月日:1996年09月01日

椎名誠 自著を語る

『本の雑誌』に書いていた「さらば国分寺書店のオババ」を読んで、編集者の星山さんが会いにきた。濃紺に白のストライプのスーツというヤクザみたいなカッコでね。実は自分も同じようなカッコでした(笑)。初めて銀座の喫茶店「エンドレス」で会ったときのことはよく覚えています。最初に依頼されたのは青年向け読書のすすめ的な本で、これも正月休みに書きました。ただどうやっても読書のすすめにはならず、全然違ったものになってしまった。受け取った編集者もギャッと驚いたけれど、面白いから売り出そうということになった。ややヤケクソ風でした。清水の舞台から飛び下りたつもりで「日刊ゲンダイ」と「夕刊フジ」に全面広告を出したりと派手な宣伝を展開。すると売れて増刷が続いた。これで自分自身も本が売れるということに開眼しました。この本はモノカキとしての実質的なデビュー作であるだけでなく、初めてのベストセラーでもあるわけですが、そのほかにもこれをきっかけに様々な商業雑誌から原稿依頼が来るようになったり、各社の色々な編集者とも知り合いになれたりと、あらゆる意味でエポック・メイキングな1冊です。 (椎名誠 新潮文庫 1996年『自走式漂流記1944〜1996』より)

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