27杯目:杜の都にこらっせ
ガラクタなのかお宝なのか……
東京都中野区/竹田聡一郎撮影
(“チェキ” instax mini 8)
椎名 北に行こう。
竹田 悪いことしたから逃げるんですか?
椎名 バカモノ。仙台文学館が展示をしてくれるんだ。
竹田 お、決定したんですね。「椎名誠 旅する文学館 in 仙台 2022」。
椎名 2ヶ月もやってくれる。
竹田 本当だ。4月23日-6月26日。講演もやるんですか?
椎名 やるみたいだぞ。お前も来いよ。
竹田 言われなくても行く予定でした。日時が決まったら公式にSNSで発表しましょう。しかし、僕は行ったことないんですが、仙台文学館って台原森林公園というでっかい公園の中にあるんですね。なんかいいですね。
椎名 仙台はさ、東北の玄関口だから都市としての機能も備わっているけれど、大きな川も海も山もあるから、風土的に恵まれているよな。杜の都とはよく言ったもので、好きな都市なんだ。欲をいえば温泉が近くに欲しい。
竹田 秋保温泉なんかは近いのでは?
椎名 そうだね。でも、もうちょっとひなびたというか、静かな温泉が個人的には好きだ。
竹田 そうですね。鳴子はちょっと距離ありますかね。いっそ仙山線に乗って蔵王に行くとか。ちょっとくっつけて旅したいなあ。
椎名 そういえば、仙山線に久しぶりに乗ったんだよ。PHP出版の取材で。
竹田 ああ、『北への旅 なつかしい風にむかって』ですか?
椎名 そうそう。愛子駅で降りた。読めるか?
竹田 設問してくるあたり「あいこ」ではないんでしょうね。さてはキラキラ駅名だな。ジュテーム駅!
椎名 お前は本当にバカだなあ。あやしって読むんだ。
竹田 へえ。おっと、駄洒落を言いそうになった。危ない。
椎名 怪しいだろう?
竹田 言っちゃったよ。その愛子には何があったんですか?
椎名 なにもない。だから良かったんだ。
竹田 おお、それこそ秋保温泉の近くなんですね。
椎名 駅からちょっと歩くと稲穂の大海原みたいな景色があって、それをよく覚えているよ。
竹田 季節は秋ってことですか?
椎名 そうだろうな。ちょっと涼しかった。ああいう、地方の在来線に乗るような取材旅は贅沢だよな。
竹田 確かに。でも椎名さんが例えば映画を撮っていた頃、『馬追い旅日記』(集英社)などを読むと、バタバタいろんなところをヒット&アウェーで巡ってるんですよ。
椎名 基本はコンバットツアーだったからね。
竹田 だから、年齢もあるのかもしれないけれど、そういう稲穂の海原を通っていても目に入らなかったかもしれませんね。
椎名 なるほど。それは鋭い指摘だな。
竹田 ビール飲んでいいすか?
椎名 好きなだけ飲みなさい。
竹田 仙山線に話を戻しますが、愛子から山形側に行くと、ニッカウヰスキーの宮城峡蒸溜所もあるんですね。
椎名 へえ。おれ、行ったことあるのかな?
竹田 すぐ忘れちゃうからなあ、このじいちゃん。ここいいなあ。行こうかな。
椎名 やっぱり仙台って風土的にも恵まれているよ。
竹田 そうですね。椎名さんは山や川、海が目的地だったりするから、仙台は通過することもあるけれど、ここらでじっくり仙台をみるいい機会かもしれません。
椎名 親しくさせてもらっていた井上ひさしさんなどにも所縁があるし、芸術や文学に対しても懐の深い街なんだろうな。誇り高き城下町だし、サムライ道みたいなものが今も息づいているのかもかもしれない。
竹田 海も近いですし。メシも酒もうまいですしね。
椎名 今も牛タンと萩の月という2トップが最大勢力?
竹田 まあ強いでしょうねえ。笹かま、ずんだ、冷やし中華発祥説などなどありますが、牛タンが強いですかね。個人的にはせり鍋が好きですが、5月くらいになるともう遅いかもしれません。
椎名 それうまそうだね。伝統も大切だけど、メシのニューフェイスにも出会いたいな。
竹田 調べておきます。
椎名 体調整えて、いざ仙台だな。
椎名誠: 自称バカ旅サケ作家。謎の蕁麻疹に悩まされていたが、ビールを飲んでたらある日急に治った。
竹田聡一郎: フリーライター。花粉症対策にヨーグルトを毎日食べて2年が経つ。勝負の春がはじまる。