26杯目:旅のつばめもついてくる
愛車シーナ・ルイガノ
東京都渋谷区/竹田聡一郎撮影
(“チェキ” instax mini 8)
竹田 自転車ありがとうございました。
椎名 ちゃんと走った?
竹田 空気穴のところ、虫ゴムってやつですね。それが劣化していて交換しましたけれど、それ以外は絶好調でした。
椎名 そうか、良かった。
竹田 ただ……ですね。
椎名 どうした?
竹田 サドルがちょっと、いや実は、だいぶ高いんですよ。
椎名 調整すればいいだろ。
竹田 椎名さんと僕って身長がだいたい同じなんですよ。だから僕が足が短いってことなのかなと思って、悔しいからそのまま乗ってます。信号待ちとか爪先立ちに近い。
椎名 あほや。
竹田 これ、いつ買ったんですか?
椎名 いつだったかな。6-7年前かな。新宿の東急ハンズで。
竹田 なんで買ったんですか?
椎名 運動不足だったし、あとは近所にタンメン食いに行くだけでわざわざ車を出すのもバカらしくて。
竹田 椎名家の近所は狭い道も多いし、椎名さんの乗ってたトライトンでっかいですもんね。都内のラーメン屋なんて駐車場がないところがほとんどですし。
椎名 そうそう。自転車は便利だった。
竹田 じゃあ当時はけっこう乗り回してタンメン食いまくってたんですか?
椎名 5回くらいかな。
竹田 5回だけ?
椎名 あの自転車、どっかの国の、なんとかっていうメーカーなんだよ。
竹田 なんにも覚えてないじゃないですか。カナダのルイガノです。
椎名 そうだっけ。とにかくちょっといいのを買ってしまったから「ちゃんと施錠しないとダメっすよ」と西澤が言うんだ。太い輪っかのチェーンだったんだけれど、それをいちいちするのが面倒になってしまって。
竹田 ああ、ワイヤーロックっすね。たいした手間ではないのに。でも、いかにも椎名さんの思考ではある。
椎名 ありがとう。
竹田 褒めてねえっす。
椎名 でも、神田川沿いを上って井の頭公園に行ったりしたよ。けっこう気持ちいいもんだよな、自転車って。
竹田 それこそ、さっき名前の出た雑魚釣り隊の西澤先輩は、当時、自転車ひとり旅ブームで、泊まりがけで富士山サイクリングとかしてましたね。向こうでパンクしてみんなに「あほや。下手に連絡取ると助けに行く羽目になるぞ。無視だ」とか言われてました。
椎名 その西澤が「せっかくだからサイクリングしましょう」って企画してくれて、何人かで多摩川に行ったことがあったな。トクヤもいたな。楽しかったよ。
竹田 なんか聞いたことあるな。狛江まで抜けてから、二子玉川まで多摩川のサイクリングコースを下って、そこで弁当食ってビール飲んで麻雀して帰ってきたって。健康なのか不健康なのかよくわからない休日。
椎名 そうそう。帰りは付き合ってくれた読売広告社の連中がでっかいワンボックスで自転車ごと載せて送ってくれた。
竹田 現代の鷹狩りみたいなもんなのかな。多摩川といえば、コロナ禍で運動不足だったので雑魚釣り隊の太陽とこの前、歩いたんですよ。川崎まで。
椎名 何キロくらい?
竹田 距離は20キロくらい。で、天野がいちばん運動不足なので誘おうという話になって。
椎名 何キロくらい?
竹田 体重は130キロくらい。でも、普通に歩こうぜと誘ったら来ないので「いい焼き肉屋を見つけたんだ」と。
椎名 来たの?
竹田 来たんですけれど、僕らが集合を多摩川にしてしまったので、思惑に気づかれてしまった。あいつはレンタカーで現地集合でした。僕と太陽は歩いたのに。
椎名 天野らしいなあ。
竹田 彼はそういう嗅覚だけはすごいですね。そして川崎の「つるや」という焼肉屋で、すさまじく食ってました。ラストオーダーの時には僕らはもう満腹だったので、キムチを肴にマッコリをちびちびやってたんですよ。
椎名 しょうがないなあ、アイツは。
竹田 で、最後に「今日は気持ちいい日だったね。また来よう」と、いかにも自分も歩いたようなコメントをしてました。
椎名 お前らは本当にバカだね。
竹田 ところで僕はこの愛車をシーナ・ルイガノと命名しました。
椎名 よせよ。
竹田 ふふふ。調子悪い時は「おい、ちゃんと走れシーナ、ぶん投げるぞ」とか言うんです。ふふふ。
椎名 優しく乗ってやりなさい。
竹田 暖かくなったらまた多摩川に行きましょうよ。
椎名 付き合うけど、麻雀とビールとだけな。
竹田 いっそ花見にしましょうか。ちょっと穴場を探しておきます。
椎名誠: 自称バカ旅サケ作家。最近は三和酒類の新ブランドである麹を使ったスピリッツ「TUMUGI」にハマっている。
竹田聡一郎: フリーのスポーツライター。ロコ・ソラーレおめでとうありがとう。