22杯目:なべ鍋チゲナベ

22杯目

セリとネギさえあれば勝ったも同然
東京都渋谷区/竹田聡一郎撮影
(“チェキ” instax mini 8)

 

竹田 前回、きりたんぽしょっつる鍋がうめえ、という垂涎トークをしてもらったので、そこから派生して今回は鍋です。

椎名 チゲ鍋ってさ、変だよな。

竹田 唐突になんですか?

椎名 「チゲ」って韓国語で鍋だろ? 鍋鍋じゃないか。

竹田 はあ。

椎名 サハラ砂漠もそうだぜ。「サハラ」はアラビア語で砂漠。砂漠砂漠。

竹田 確か襟裳岬も、アイヌ語で岬を意味する「エンルム」が語源だそうです。岬岬。

椎名 関係ない話すんなよ。

竹田 椎名さんが言い始めたんですよ。馬から落馬して骨を骨折してしまえ。鍋です、鍋! 僕は元日にすき焼きをしました。うまかった。椎名さんは好きな鍋はありますか?

椎名 うーん、どうだろう。

竹田 なんかテンション低くないですか?

椎名 鍋ってあまり好きじゃないんだよ。

竹田 ええ!?

椎名  前回は雪中キャンプのよき思い出として例外的にきりたんぽの話をしたけれど、鍋って店で食うと面倒のほうが多いだろ。

竹田 ん? 鍋奉行とかそういう話ですか?

椎名 そうそう。みんな親切でやってくれているんだろうけれど、あの中央集権主義的な構造に「うるせえうるせえ」と言いたくなってしまう。自分の好きなタイミングで好きなものを食べたい。

竹田 椎名さんらしい意見ではありますね。

椎名 鍋といえるかどうかはわからないけど、コタツでひとり湯豆腐のほうがよっぽどいいよ。

竹田 例えば老舗の高級店とかフルサービスしてくれるじゃないですか。ああいうのはどうです?

椎名 それがまさに嫌なんだ。前に和牛で有名な西日本の街ですき焼きを食べたんだ。

竹田 いい取材ですねえ。

椎名 よかないよ。そこの仲居のおばちゃんが、砂糖を肉に異常なほどぶっかけるんだ。

竹田 確かに関西風のすき焼きは、牛脂、牛肉、ネギ、砂糖の順で大胆に進めていきますね。

椎名 砂糖が過剰なんだよ。「砂糖はちょっと控え目でお願いできますか」と頼んでも、テキは「これが本場のすき焼きですから」とジャバジャバ入れる。譲らないんだ。

竹田 なるほど。でもその地域性こそ鍋の醍醐味でもあります。

椎名 それぞれの地方にそれぞれの鍋があるってこと?

竹田 そうです。椎名さんが前回、挙げてくれた秋田のしょっつるやきりたんぽもそうですが、北海道の石狩鍋、山形のどんがら汁、仙台のせり鍋など、やっぱり寒い地方にはうまい鍋が多い気がします。他にも山梨のほうとうや、大阪のうどんすきなども鍋に分類できるかもしれません。

椎名 土着の食文化としての鍋は面白いかもしれないね。地域性という意味では俺はおでんが好きだな。

竹田 なるほど。おでんもかなり地域差がありますもんね。

椎名 タネはもちろん、その呼び方、出汁の差など、漁業や特産と直結していて、とても文化的だと思うんだ。

竹田 この前、青森で生姜味噌おでんを食べたんですが、うまかったなあ。

椎名 やっぱり生姜で身体を温めるんだろうな。

竹田 青函連絡船に乗るお客さんのために、屋台のおかみが最初に生姜を入れたという説があるようです。

椎名 面白いね。北へ帰る人の群れは誰も無口だったのは、おでんをモゴモゴ食っていたからかあ。他にはどんな地域性があるの?

竹田 練りものメーカーの巨人・紀文食品のWebサイトに「日本のご当地おでん」という、分かりやすいまとめがありました。

椎名 ふんふん。

竹田 興味深いタネは北海道の白子やホタテ。

椎名 豪華だね。いい出汁が出そうだ。

竹田 東北は曲がり竹、静岡は黒はんぺん、金沢は車麩、大阪は牛スジなどが入ります。

椎名 焼酎でも日本酒でも良さそうだね。出汁は?

竹田 東京風は濃口しょうゆとかつお節、名古屋は八丁味噌、鹿児島は豚、とやっぱり頷けるスープで食べます。

椎名 沖縄は?

竹田 前出の紀文のWebサイトから引用しますと「トロッとした豚足(テビチ)が入りコクのある味付けが特徴。この他ソーセージ・青菜が欠かせない。おでんの発展は戦後といわれるが、最南端の沖縄には意外にもおでん店が多い」とのことです。

椎名 テビチ! 面白いな。

竹田 雑魚釣り隊の西澤先輩が沖縄に行ったじゃないですか。

椎名 うん。年末に会ったけど、元気そうだったよ。

竹田 那覇に行くと沖縄おでんの有名店「東大」に連れてってくれるんです。

椎名 おいしい店なの?

竹田 良い店です。安いです。そしてそこは焼きテビチという出汁で仕込んだ看板メニューがあるんです。これがうまい。

椎名 へえ。西澤に連れてってもらおう。

竹田 オミクロンに早く落ち着いてもらいましょう。

椎名 それまでは湯豆腐だな。

椎名誠: 自称バカ旅サケ作家。2022年初は「まず初場所だ」と意気込む。注目の力士は大鵬の孫で元関脇貴闘力の次男である王鵬。

竹田聡一郎: フリーライター。2022年初はライフワークのひとつであるカーリング取材の執筆に集中したい。がんばれ、ロコ・ソラーレ。

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