19杯目:あけましておめでとうございます

2022new

鏡餅はこれくらいささやかでいいのだ
東京都中野区/椎名誠撮影
(“チェキ” instax mini 90 ネオクラシック)

 

竹田 あけましておめでとうございます。

椎名 おめでとうございます。年末年始は寒かったけど、キリっと晴れて気持ちよかったね。

竹田 なにしてたんですか? まずは年末から。

椎名 30日はトクヤと軽く忘年乾杯してたな。

竹田 大晦日は?

椎名 原稿書いてた。

竹田 え、仕事してたんですか? てっきり昼から飲んで「年越しなんてもう寝てたぜ」パターンだと思ったんですけど。

椎名 割といつも年の瀬まで書いているんだ。今年は賢いほうのタケダさんから「あれを書いてください、これを読みたいです」というリクエストがたくさんあったので、それぞれ十数枚ずつは書いたと思う。

竹田 その表現!

椎名 ん?

竹田 集英社の武田さんですよね。

椎名 そうだよ。

竹田 確かに彼女は賢い方です。僕も何度も仕事しているので、編集者として優秀なのも知っています。でも、あっちに「賢い」をつけてしまうと、自動的に僕が賢くないことになってしまう。

椎名 だって紛らわしいじゃないか。女性のタケダさん、男性のタケダ、というのも変だし。

竹田 だから「タケダさん」は武田さん、「タケダ」は私め竹田、でいいんですよ。どっちにしたって椎名さんの周囲に僕に敬称をつけて「竹田さん」と呼ぶ人なんていないんだから。

椎名 でも別に俺は君のことを「賢くないタケダ」なんて呼んだことはないよ。武田さんに「賢い」をつけているだけ。

竹田 ダメです。椎名さんは俺たちの隊長なんだから影響力がある。最近、トクヤさんとか雑魚釣り隊の連中も「賢いほうのタケダさん」からどんどん離れて、武田さんがいない場面ですら「おい、バカのほうのタケダ」とか言う。呼び分けは必要ないというか、もはや悪口じゃないか!

椎名 分かったよ、じゃあ2022年は「いたって普通のタケダ」として生きなさい。

竹田 それもなんか嫌だな。もういいや、この問題はまた後日、話し合いましょう。脱線が過ぎました、すいません。大晦日の話。酒は飲んでないんですか?

椎名 飲んだよ。遅い午後からかな。映画を観て適当につまみながらビールを。

竹田 何を観たんですか?

椎名 『ゴッドファーザー PART III』。いつ観ても面白い。

竹田 年末にイカれたヴィンセント・マンシーニを観るとは、なかなかですね。年越し蕎麦は食べたんですか?

椎名 食べたよ。甘辛い油揚げと、とろろを入れた豪華版、うまかったな。

竹田 元日はどうしてたんですか?

椎名 原稿書いたよ。

竹田 え、仕事してたんですか? 今度こそお屠蘇がぶ飲みかと思ったのに。

椎名 人のことをなんだと思っているんだ。

竹田 椎名家はおせち料理はどうしているんですか?

椎名 何年か前までは、一枝さんが全編豪華スペクタクルフルコースといった感じで数日かけて作ってくれていた。

竹田 うまそうですね。久しぶりに一枝さんのエッセイ『すっぴん素顔のこのまんま』(ワニ文庫)を読んだのですが、出汁についての愛、和食についての思いがすごかったです。そんな人の作るおせち。嗚呼、いいなあ。

椎名 昔はいやはや隊の仲間とか担当編集者が年末年始によく挨拶がてら遊びに来てくれたから、もてなしていたんだけれど、今はもう老夫婦だけだから。

竹田 残念ですけど、そりゃそうですよね。お雑煮くらいは食べたんですか?

椎名 そうそう、まさに雑煮だけ。つきたての餅を毎年、年末にもらうんだよ。

竹田 あ、新宿三丁目「海森」の常連さん、タグチさんの餅ですね。

椎名 勿来の歳末粗大ゴミ合宿の後に寄るのが吉例なんだけど、今年もコロナで合宿はできなかったからな。30日にトクヤと乾杯している時に「海森」のナカモトが届けてくれたんだ。

竹田 あの餅、柔らかくてうまいんですよね。この写真がそれっすね。あとは何してたんですか?

椎名 孫の風太が遊びに来たから進路について話をした。

竹田 そうか、彼もこの春に大学進学ですね。あの気持ちのいい少年が立派な青年になったのか。光陰矢の如し。どんなアドバイスをしたんですか?

椎名 そんな大したことは言っていない。英語は勉強していたほうがどこに行っても役に立つぞ、英語の本を読んでもいいかもしれない、くらい。

竹田 確か『岳物語』(集英社文庫)が英訳された『My Boy』(講談社インターナショナル/文庫版『Gaku Stories』)がありますね。なんといっても風太くんの父親の話ですから、読みやすいかもしれない。しかし、なんか慎しくも正しい年末年始を過ごしてたんですね。樽の酒ぜんぶ飲むとか、栗きんとんバケツで食べるとか、もっと爛れた日々を期待していたのですが。

椎名 普段が爛れているから、正月ぐらいはね。

竹田 なんと殊勝な心がけ。ついでに何か新年の抱負のようなものがあれば聞かせてください。

椎名 ないよ。抱負とか目標とかそういうの作ったことがない。

竹田 うーん、それもまた椎名さんっぽいかもしれませんね。では今年もぼちぼち楽しくやっていきましょう。よろしくお願いします。

椎名 よろしくお願いします。

椎名誠:自称バカ旅サケ作家。2022年初は「まず初場所だ」と意気込む。注目の力士は大鵬の孫で元関脇貴闘力の次男である王鵬。

竹田聡一郎:フリーライター。2022年初はライフワークのひとつであるカーリング取材の執筆に集中したい。がんばれ、ロコ・ソラーレ。

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