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出版社:光村図書出版

発行年月日:2021年10月08日

椎名誠 自著を語る

ぼくの本としては珍しいジャンルに入る一冊だ。ずいぶん前(ざっと25年ぐらいだろうか)から主に小学校向けの教科書に書下ろしの短篇を書いていた。教科書への出稿というのは一般の書籍や雑誌の世界にないような一連のやりとりや、内容のチェックなど珍しいものがあり、それはそれでぼくは楽しんでいろいろ子供向けの話を書いていた。それらができるたびに思いがけない出来事が続いた。教科書を学んだ子供たちがぼくにクラス全員で感想文を書いて送ってくれるのだ。原稿用紙に幼い子供たちが精いっぱいの感想を述べているのを見ていつも感動した。しかし返事がなかなか書けない。最低でも一クラス40人ぐらいの児童が手紙を書いてくるので、学校単位になるととても応じきれないのだ。余裕があるときはクラスや学校単位でまとめて一通の返事を書いていた。そうした教科書に一番書いていたのは光村図書のもので、今度それらをまとめて一冊の本にしたわけだ。教科書には挿絵が入るが、それぞれいろいろな人が絵を描いてくれた。今度は昔から一番たくさんの本でコンビを組んでいた沢野ひとし君がまとめて一貫してすべての話に絵を描いてくれた。そういう意味でたいへん贅沢な記念碑的な一冊になったと思う。

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