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出版社:新潮社

発行年月日:2021年07月15日

椎名誠 自著を語る

モノカキなので資料としても読書のためとしてもたくさんの本を所蔵している。近所に住んでいるマゴらは図書館のようだと言って興味深げに眺めているが、ぼくの収集している本はけっこう特殊な冒険、探検的なものを中心に、科学・化学の研究概説書、宮沢賢治が好きなので影響されて鉱物や金属類に関する本など、子供にはちょっと難しい本も多いので、最近あまり利用されなくなってしまった。愛読書群としてそれらはいくつかの本箱に収められているが、友人知人などが来てそれらを眺め、たいてい驚くのは、漂流記やその類に分類される本の多さだ。愛読書といえばこれほど愛読し続けた本類は無く、もどかしいのはこのジャンルの新刊があまり現れないことである。長年にわたって何度もいろんな漂流のケースを読んでいるうちに感じたのは、人間の強さとその可能性について、その感動が再読するたびに深まっていくことだった。編集者の勧めもあって、それらの中でも表題になるテーマをこの際とことん突き詰めようと考えたのが本書である。これを書いたら、なんだか重要なことをちゃんと書き残したなあという満足感があった。

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