出版社:新潮社
発行年月日:1990年12月20日
椎名誠 自著を語る
SF三部作の中では最も力を込めて書いた作品です。本当はこの作品が本命で「どうだまいったか」的威力があると思っているのですが。タイトルも内容も自作の中では一番好きな作品です。これは学生のころにアルバイトで行っていた問屋の倉庫での体験が発想の原点となっています。その体験をSF的に書くとこの作品となり、私小説風に書くと『ハマボウフウの花や風』に入っている「倉庫作業員」という作品になる、というわけです。実はこの作品は映画化をもくろんでいました。『水域』と組み合わせてシナリオまで作っていたのですが、準備中に公開されたハリウッド映画の『ウォーターワールド』が、ぼくの考えていたこととほとんど同じことをやっていたんです。細かい描写や世界の設定まであまりにも似ていたんで、ちょっとやる気を失いました。まあ、むこうは空前の予算を使ったハリウッドの映画でこっちは日本の独立プロだから、規模やなんかはずいぶんちがうのですが、物語の枠組みが一緒となると、真似したとか思われるのもいやだし、アイディアはそれだけではないので、とりあえず他の企画にとりかかることにしました。でもくやしいですね。この物語世界のことはぼくは完全に手中に収めているので、小説の方でもできるだけ書いていきたいと思っているのですが、このシリーズはとにかく集中力と忍耐力が必要なので、今のような忙しさの中では、なかなか難しいですね。(椎名誠 新潮文庫 1996年『自走式漂流記1944〜1996』より)
武装島田倉庫
発行年月日:1993/11/25
文庫
『新装版 武装島田倉庫』
出版社:小学館
発行年月日:2013/11/11