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出版社:東京新聞

発行年月日:2021年05月31日

椎名誠 自著を語る

ときどき書いているが、ぼくは5歳から19歳まで千葉の幕張に住んでいた。当初は半農半漁の千葉の寒村といったところで、子供には自然に恵まれたいいところだった。潮干狩りができたり、遠浅の海で沿岸漁業が盛んで、風景も穏やかな千葉の海だから子供の遊び場としては最適だった。小学校の中頃から町は急にざわめいてきて、突然海の埋め立て工事が始まった。なんで埋め立てるのか子供だからわからなかったが、今思えば幕張メッセのための地盤造りが始まったのだ。埋め立て工事があってもぼくたちは夏になるとほとんど毎日海に出かけていた。仲間たちと貝や小魚を獲ったりと楽しい日々だった。その頃のことを東京新聞の千葉版のコラムに3年近く連載していたものがまとまった一冊だ。なんでマサイ族か、ということについては、読んでもらえばわかります。今まであまり書かなかった海ガキの頃の、気分よくできた一冊の記憶話です。

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