『椎名誠 超常小説ベストセレクション』
目黒それでは久々にインタビューを再開します。前回のインタビューから3年たちましたが、その間に椎名が書いた本がかなり溜まってきたので、「本人に訊く」第2シーズンを始めます。
椎名もう3年たったの?
目黒早いよね。相変わらず椎名の執筆ペースは落ちてないね。刊行リストを見ると、この3年、新刊はだいたい年6冊のペースで上梓している。文庫化を除いた新刊だけで年に6冊だからすごいよ。七十五歳の物書きで、こんなに書いている人はなかなかいないぜ。
椎名そうかあ。
目黒実感としてはどうなの?
椎名連載していたやつが本になっているだけだからなあ。
目黒ただね、以前どこかで読んだなあという話も少なくない(笑)。
椎名まあまあ(笑)。
目黒というわけで、1冊目は『椎名誠 超常小説ベストセレクション』。角川文庫から2016年の11月に出た本です。これは、2012年の4月に、柏艪舎から出た「超常小説ベストセレクション」の2冊、具体的に言うと『月の夜のわらい猫』と『水の上で火が踊る』の合本だね。その柏艪舎版の2冊と、この角川文庫版の、それぞれの収録作品がどう違っているのか、どこが同じなのかを、ここに書いておきます。
『月の夜のわらい猫』
- 雨がやんだら
- 蚊
- ×生還
- ×管水母(くだくらげ)
- 鯤飩商売(こんとんしょうばい)
- ×水域
- 胃袋を買いに
- ×考える巨人
- 問題食堂
『水の上で火が踊る』
- いそしぎ
- ぐじ
- みるなの木
- ×突進
- 猫嘗祭
- ねじのかいてん
- ×三角州
- ×青野浩の優雅でもなければ退屈でもないありふれた午後
×をつけた4編と3編をカットして、残った10編に新たに9編を足したものが、角川文庫版の『椎名誠 超常小説ベストセレクション』です。だから合本とはいっても、収録作品が半分近く異なっている。これはもう別の本といってもいいね。
念のために角川文庫版に足した9編の題名もここに書いておきます。
- ニワトリ
- スキヤキ
- 中国の鳥人
- ねずみ
- 赤腹のむし
- 海月狩り
- 抱貝
- 漂着者
- 飛ぶ男
柏艪舎社版の2冊も、角川文庫版も、収録作品は椎名が自分で選んでいるんだけど。
椎名あ、そうなの?
目黒最初の柏艪舎版に「スキヤキ」を選んでいないということに驚くよね。あの名作を選ばなかったのかよって。この文庫本の解説で、たぶん椎名は柏艪舎版の2冊を出すときに、「スキヤキ」とか「中国の鳥人」とかを忘れてたんだろうと書いているけど。
椎名その解説は誰が書いたの?
目黒私です(笑)。ええと、この角川文庫の『椎名誠 超常小説ベストセレクション』は、何も語ることがないんだよ。というのは、それぞれの短編が収録された作品集を紹介するときに取り上げているし、柏艪舎版をこのインタビューでやったときにも触れているんだ。さすがにもう語ることがない。
椎名まあ、そんなところかな。
目黒柏艪舎版をお持ちの人も、これはお買いになったほうがいいでしょうね。収録作品の半分が違うんだから。これが決定版でしょう。
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(この対談は2019年10月21日に行われました)