「6月の詩(うた)」

制作=1974年/8ミリ/8分/カラー

出演=かたつむり、他

ロケ地=銀座、小平市

あらすじ

梅雨に入った街の情景を淡々と描いた「芸術的作品」。全篇を通して、ある雨の一日という構成になっている。

椎名誠 自作を語る

この映画には「しいなまことプライベートフィルム」というサブタイトルがついています。このころは、梅雨に入って雨だらけの日々に本当に退屈していたので、カメラを持ち出して自宅周辺の映像を撮ったりしていました。そうしているうちに、雨模様の映像だけで一本のシネ・ポエジーが撮れないかな、と思ったんです。そこで雨の日は、会社にいくときもカメラを持って行って、スケッチ風に街の風景を次々に撮影していきました。  銀座通りに面している、ぼくが当時勤めていた会社の窓から真下を眺めたら、さまざまな色や模様の傘が行き交っているのが見えて、それがとても面白かったので思わず撮影しました。後年、その映像を見た人からあれは『シェルブールの雨傘』の映像を真似したでしょう、と言われたことがありました。ぼくは『シェルブールの雨傘』を見ていないのでわからないんですが、どうも同じようなショットがあったようですね。でも見ていない映画の真似をできるはずもないので、これはぼくのオリジナルな映像です。まあ、すぐれた映画監督というのはみんな同じような映像を撮るものなんです(笑)。  ナレーションは一切入れずに音楽で映像の美しさを追求したのですが、今思うと自己満足の映画ですね。 (椎名誠 新潮文庫 1996年『自走式漂流記1944〜1996』より)

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