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シーナに訊く

「助走は終わった。大駆けはこれからだ!」

梅雨明け間近の7月某日。場所はご存知、小誌大クライアント様でもある
新宿三丁目居酒屋「池林房」。シーナワールド第五弾「肉にガブリつく!」を校了してホッと一息。美味い生ビールを飲みながら、シーナと編集ニシザワが小誌の来し方行く末を話込みました。

ニシザワシーナさん、なんでそんなに焼けてるんすか? 真っ黒焦げですけど。

シーナこれなぁ。詳しくはまたどっかで話すけど、昨日自宅の屋上で炎天下のなか、寝ちまったんだな。

ニシザワ真昼間に太陽の下で寝た?

シーナうん、2時間くらいか。暑くて不快感で起きたよ。

ニシザワなんつーことを・・・・・・。熱中症には気をつけてくださいよ。「肉にガブリつく!」も無事校了し、7月25日には発売と相成ります。創刊号の「飲んだビールが5万本!」の発売が2013年ですから、それから我らもエッチラオッチラと3年間頑張ってきましたね。なんか感想ありますか?

シーナもう3年経つか。やっぱりオレは雑誌人間だなぁ、ってことを改めて感じたよ。高校の頃に雑誌づくりにあこがれて、サラリーマン時代に「ストアーズレポート」を立ち上げて、二束のわらじで「本の雑誌」を作りはじめて。作家なんだけど、やっぱりどこかで編集者でいたいっていう欲求があるんだろうな。「いつかまた、まだ手がけていないような雑誌を作りたい」って思っていて、それがこうしてシーナワールドになった訳だ。

ニシザワシーナワールド創刊当時、本の雑誌HPでインタビュー連載をやった時に、シーナさん「俺がいったいなにを面白がってきたのかっていうことの集大成になるだろうな」と話をしていました。それでこれ、真面目に聞くんですけど、「飲んだビールが5万本!」が創刊号。これはいいとして、そこから「無人島はつらいよ」「怪しいの大好き!」「旅ゆけばヒトモノケモノバケモノと会う」、で今回の「肉にガブリつく!」。だいぶ脈略のないように感じます。

シーナお前が真面目に聞くから、真面目に答えるけど、我が人生、思いつきの人生であったよ。「長期ナントカ計画」とかないもんな。本の雑誌だって、思いついて「やっぱり季刊だ!」となって、また少したって「雑誌は月刊に限る!」とか。そういう調子なので、よく目黒におこられたりもしたけどな。長編小説書く時も、プロットとか考えたことないよ。突然書きはじめる。そうすると物語がどんどん湧いてくるんだな。そのシーナワールドもその延長線上にあって、その時々に「これだ」と思い浮かんだ時に、それがすべて。だいたい机でいくらウンウン考えていたってロクなアイディアは出んよ。

ニシザワそれでシーナワールドもこういう特集になっていったと。

シーナ「旅ゆけばヒトモノケモノバケモノに会う」に一番、自分の思いが込められているかなぁ。新参者の雑誌だからさ、やっぱりインパクト重要だろ。これはタイトルに力が入った。いいんだ、このタイトル。

ニシザワタイトル長すぎて、書店員さんが注文できずにいるとか(笑)。

シーナそうか(笑)。まあ、あとから考えると、「旅ゆけばヒト」「旅ゆけばモノ」って分けてやればよかったよな。旅にいけば人と出会う、それだけで大特集を組めるもんなぁ。

ニシザワ創刊から「マンガ盛り君」「場末日記」と長期連載が続いています。この連載が無くたって雑誌は成立するんだけど、やっぱりあると僕はホッとする。しかも「内容を良くする」とかはあんまり考えずに、淡々と偉大なるマンネリでやるのがいいと思っているんです。たった一人でも楽しみにしてくれる読者がいれば嬉しい。

シーナ連載は、安心感、継続と蓄積がキーワードだな。どっちかの連載がいずれどっかの編集者の眼にとまって、本になったりしてな。

ニシザワ沢田康彦さん(初代ドレイ、現「暮しの手帖」編集長で時の人)にも毎号、何らか寄稿してもらっていますね。

シーナサワダはね、書きたいテーマがいっぱいあるんだと思うんだ。以心伝心でオレにはそれが分かる。それってとっても大切なことでな。まさにサワダの記事がオレの望みだったよ。つまり、「毎回テーマは自由。原稿枚数も何枚でもどうぞ」って編集者に言われたとすると、オレだったら意気に感じるし、そういった環境を雑誌で提供したいとも思っていたよ。「書きたいヒトに書きたいモノを書いてもらう」。このことには強い思いがあるな。今号も書いてもらっている高野秀行さんや宮田珠己さんなどにもその思いは伝わってくれていると思うな。

(ここで「池林房」オーナー・太田トクヤ登場)

太田あれ、お二人さん。今日はどうしたの?

シーナシーナワールドの打ち上げだよ。トクヤ、創刊号から支えてくれてありがとうな。雑誌読んでくれてるか?

太田もちろん。だんだん良くなってきてるね。

シーナおお、そうか?

太田うん、創刊当時は寄せ集め編集部だったんだろうから、何というか内容もバタバタした感じだったんだけど、だいぶプロの雑誌っぽくなってきたもんな。

シーナそれは嬉しい。「表彰状」やるよ、トクヤ。

太田いらない。もっといいもんが欲しい。

シーナ「表彰状」はタダだからな(笑)。

ニシザワさて、「とつげき!シーナワールド!!」の今後なんですけど。

シーナ助走は終わった。発作的に作ってきたし、それはいいんだけど、もう少しちゃんとした編集会議を持ちたい。各編集者が企画を持ち寄るんだ。

ニシザワいまはカネコ、雑魚釣り隊の近ちゃん、タケダの内輪だけで作っていますが、ちょっとそこが弱みでもあるのかな、と。たとえば澤田さんなどにも入ってもらって、客観的にいろいろな意見を聞くのいいですね。そして、映画や写真、SFなどなどまだまだ語っていないシーナワールドがたくさんあります。

シーナそうだ、この前さ、映画についてのインタビューを受けたんだ。好きな映画5本、サブで7本挙げてくれっていうお題でさ。でも映画の内容もさることながら、ビスタビジョンやシネマスコープっていう画面アスペクト比の話や、フィルムの話、キャメラの話などいろんな角度から言いたいことあるからな。

ニシザワおお、それは面白そうだ。

シーナあとな、「世界の遊び」っていうのはどうだ? オレたちの子ども時代の遊びから、世界の子どもたちの遊びなど「遊び」っていうことを深く特集するんだ。葉(シーナの長女。NY在住)なんかにも協力してもらってさ。

ニシザワオレ、「キャップ面」語らせたら、ちと煩いですよ。

シーナなんだ、その「キャップ面」って。

ニシザワ牛乳キャップあるじゃないですか。あれを使ってメンコやるんですよ。

シーナふーん、ずいぶん地味な遊びだねぇ。まぁでもそういうことだよ。

ニシザワやりましょう、やりましょう。実家にまだキャップ面あったはず。

シーナカビはえてるんじゃないのか(笑)

ニシザワですね。

7月吉日。「池林房」にて。

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