『たき火をかこんだがらがらどん』

目黒それでは『たき火をかこんだがらがらどん』。東京新聞、東京人、小説新潮、季刊HABAなどあちこちに書いた短いエッセイをまとめたもので、その点では『ごんごんと風にころがる雲をみた』と同じ路線。これまでどこかで聞いたことのあるような内容も同じで、しかも、この『たき火をかこんだがらがらどん』、その『ごんごんと風にころがる雲をみた』と同じ2007年6月に小学館から出ている。こちらの文庫化は2010年8月に小学館文庫。似たような本を同じ月に出すなんて、ひどいね。

椎名そうだよな(笑)。

目黒ただし、内容はともかく(笑)、本の作りは好感が持てる。というのは初出をそれぞれの短文の最後に明記しているんだ。文庫になってもそれを踏襲しているのはいいね。ええと、これまで椎名が書いたこととだぶっている話が少なくないんだけど、中には初めて知る話もある。たとえば、父親がサイドカーで帰ってくる光景がこの本の中で描かれているんだけど、これ、これまで書いたことない。カッコいいよね、サイドカーなんて。

椎名しかも羽織袴だよ。

目黒なにそれ! もっと知りたいなあ。書けばいいのに。

椎名いま「すばる」で書いている。

目黒そうなんだ。じゃあ、夏になると多摩川に兄や姉たちと泳ぎにいったとかもこの本で初めて知ったけど、そのうちに書くのかな。

椎名そうだな。

目黒多摩川に泳ぎに行ったというんだから千葉にいく前、世田谷にいたころだよね。何歳くらいだった?

椎名4歳だな。

目黒4歳じゃ覚えてないか。

椎名記憶が飛び飛びなんだよ。いまのうに姉に聞いておこうかな。

目黒そうだよ。自分の知らないエピソードがあるかもしれないし。あと、これはどうということない話なんだけど、武蔵野の外れに住んでいたとき、バターパンのおいしい店にいたあやこさんのことも初めて読んだ。こういうふうに書いてないことって、まだまだあるんだね。

椎名三十五年も書いているのにな。

目黒沢野が高校時代に源氏鶏太『東京一淋しい男』を読んでいたって話が出てくるけど、沢野の性格がちょっとわからなくなる。

椎名どうして?

目黒沢野って、本当に理解しているのかどうかはわからないけど、芥川とかそういう日本文学の名作を読みたがるでしょ。そういう沢野が、特に高校時代に源氏鶏太を読むなんて信じられない。

椎名おれも読んだよ。

目黒源氏鶏太の『東京一淋しい男』を?

椎名うん、沢野に借りた。

目黒だいたいね、勉強が出来ないのに読書好きって、おかしいよ(笑)。

椎名おれも高校時代は勉強が出来ないのに読書が好きだったぜ。

目黒あんたの成績はどのくらいだったの?

椎名真ん中くらい。

目黒沢野は?

椎名もっと下(笑)。

目黒沢野はパチンコがうまいっていうのも信じられない。

椎名うまかったよ。

目黒パチンコをするイメージ、ないんだよなあ。ギャンブルに向いてないからなあ。ま、いいか。ええと、それではクイズです(笑)。

椎名久々だな(笑)。

目黒旅の必携四点セットをこの本で書いているんですが、これは醤油とかカツオブシとか海苔みたいな口に入れるものではなく、持っていくものですね。はい、どうぞ(笑)。

椎名ええと、まずはガムテープだな。

目黒ピンポン!

椎名ガムテープは売ってなかったんだよ。

目黒あ、外国で?

椎名そう。あとは、ビーチサンダルかな。

目黒ピンポン!

椎名お酒の入った水筒。

目黒ブー。

椎名ええ、違うのかよ。わかんねえなじゃあ。

目黒十徳ナイフと、目覚まし機能つき腕時計。

椎名ふーん。

目黒言っておくけど、あなたが書いたんだからね(笑)。

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