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出版社:日経ナショナル ジオグラフィック社

発行年月日:2015年01月28日

椎名誠 自著を語る

 自分でもあきれるほど多岐にわたるジャンルのものを書いてきているが、その根幹部の路線のひとつになっているのが世界の様々な国への旅の記録である。ある目的を持って、それを書くにはその国へ行くしかないという種類のものもあれば、テレビドキュメンタリーなど、行く目的の主たるものは別なところにあっても、結果的にまあ作家だから本にしていくという二つのケースがある。
このアイスランドはそのどちらにも入らない本のような気がする。テレビドキュメンタリーの場所を考えるときに、その時期、このアイスランドがぼくにとっては大きな対象になっていた。それは「ヨーロッパの北極圏」というキーワードである。それまでアラスカ、カナダ、ロシアの北極圏を旅してきた。残ったのはヨーロッパの北極圏で、これの最大のものはグリーンランドだ。ここに行けばだいたい地球のてっぺんの北極圏をぐるりと足を踏み入れたことになる。
同時に、アイスランドがOECDの分析などによって世界でいちばん幸せな国と言われ、自負もしていると聞いた。そのデータによると日本は七六位だかのえらく離されたところにある。何がどういう組み立てでこの国の幸福感が形作られているのか、それをこの目で見て確かめたいという書き手としての欲求も大きかった。
行ってみるとほんとうに様々なファクターで幸せ感というものが存在するのだということを知った。これまで見てきた世界各国を、この国に行ったことによる新たな視点によって見直していくという大きな刺激も受けた。やはり絶対に行くべき国であったのだなと現地を旅しながらつくづく思った。これからもこうした外国異文化への旅の本を書くかもしれないが、旅先としてはこの本で頂点を極めたという気持ちもかなりある。

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