『大漁旗ぶるぶる乱風編 にっぽん・海風魚旅4』

目黒それでは『大漁旗ぶるぶる乱風編 にっぽん・海風魚旅4』です。週刊現代に連載していた日本海辺紀行シリーズの第4弾。2005年4月に講談社から出て、2008年7月に講談社文庫と。あのね、沖縄の伊是名島の話が出てくるんだけど、島を歩くとどの家の縁側にもお茶セットが置いてあるというんだ。急須と茶碗と魔法瓶。で、留守だったら勝手に休んでいってくださいって。これね、ついこないだ、テレビを見てたら出てきたよ。どこの島の映像だったのか覚えていないんだけど。

椎名それはたぶん伊是名島だよ。

目黒どうしてそう言い切れるの? こういう風習は沖縄全般にあるんじゃないの? 石垣島とかさ。

椎名昔は沖縄全般にあったらしいけど、いまは大きな島にはないよね。

目黒この伊是名島しかない?

椎名そうだと思う。大きな島では防犯上ありえない。

目黒椎名は日本中行ってるよね。鄙びた田舎にも。そういう地域にもこういう風習はないの?

椎名聞いたことがない。

目黒へーっ、すごいな伊是名島。話はどんどん飛んでいくんですが、瀬戸内海の因島に行ったときに、ここを舞台にした今東光の小説を高校生のときに読んだときに思い出す話が出てくる。その小説のタイトルは覚えてないよね。

椎名「悪名」だな。

目黒あのシリーズの一編か。映画も見たの?

椎名勝新太郎と田宮二郎な。どうだったかなあ。瀬戸内海の因島を舞台にした映画は見たかどうか覚えていない。

目黒映画を先に見て、それで興味が覚えて原作を読んだとか。それとも椎名が高校生のころはまだ映画化されてないか。いや、ぎりぎりか。どうして高校生が「悪名」を読んだのかなあ。その動機を知りたいな。

椎名なんで?

目黒だって娯楽小説だよ。高校生の椎名が読むような小説じゃない。不思議だなあ。ま、いいか。ええと、また沖縄の話になるんですが、島によってハブがいたりいなかったりするのは不思議だね。

椎名そうなんだ。1島置きにいるんだよ。

目黒えっ、何それ?

椎名久米島にはハブがいるが、その隣の奥武島にはいない。ところがその隣のオーハ島にはまたハブがいるんだ。つまり、1島置き。

目黒その理由は解明されてないの?

椎名謎のまま。

目黒へーっ。

椎名オーハ島でキャンプしたことがあるんだよ。ハブがいるって知らなかったころで、平気でやぶの中でしょんべんしたりしてた(笑)。あとで聞いたら、ハブがうじゃうじゃいる島なんだ。そうそう、外国の女性を殺した青年が整形して隠れ住んでいたのがこのオーハ島だよ。

目黒あったなあ。そういうことが。

椎名あの報道を聞いて、ハブがうじゃうじゃいるあの島でよく隠れてたなあとびっくりしたことがある。

目黒北海道の厚岸でカキを食べるくだりに、スコットランドの名産である「シングルモルトウイスキーのボウモア」をふりかけて食べるとおいしいという話が出てくる。

椎名ボウモアはちょっと癖のあるウイスキーなんだけど、カキに合うんだ。

目黒このボウモアって何? グレンフェデックとかグレンモーリーとかと同じくブランド名?

椎名うん。このボウモアは海のそばで作られているんだ。だから海のものと合うんだろうな。

目黒話はまた飛ぶんですが、例の「おいしいラーメン屋の三条件」がこの本でも出てくるんだけど、その後、この条件にあう店にはいって失敗したことはない?

椎名ないなあ。

目黒以前も紹介したから繰り返しになるんだけど、①駐車場が完備されていて、しかも第2、第3がある②のれんが汚れている③厨房にたくさんの人が無言で忙しく働いている──という三条件。そうか、失敗しないのか。

椎名というよりも最近はほとんどラーメンを食わない。

目黒えっ、どういうこと?

椎名あんまり食べたいとは思わないんだ。

目黒ちょっと待ってね、この本では行く先でラーメンを食っているよ。まるでラーメン紀行みたいな雰囲気がある。これは10年前に出た本なんで、現在は違っているということか。

椎名最近はカツ丼も食わないな。

目黒どうしたの椎名?

椎名いや、食欲そのものがあまりないんだ。

目黒ありゃりゃ。

 

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