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出版社:角川書店

文庫

発行年月日:2014年10月25日

椎名誠 自著を語る

「雑魚釣り隊」のパート3とほぼ同じ時期に出てしまった紛らわしい「あやしい探検隊」ものの新刊である。「あやしい探検隊」は「雑魚釣り隊」ができるはるか以前、今から30年前に登場していた。「探検隊」といいながら別になにもタンケンせず、当初は日本の主に島々に上陸して、浜辺で焚火キャンプをし、飲んで歌って夜を過ごすという、これも大変お気楽な遊び旅だった。大体ぼくは常に年上年下かかわらず同じような嗜好趣味を持った連中とそういうアバウトな旅をすることが多く、タイトルこそ違うものの、実態は「雑魚釣り隊」の行状記とほぼ同じようなものである。 ただし今回はテーマがあった。飽食グルメといわれて久しい現代、その逆のひもじさと貧食をベースに、できるだけ人に食べ物を恵んでもらいながら旅ができないだろうか、という時代へのささやかな反逆精神が根底にあった。昔、外国の旅で先方のミスによって一週間近く知らない土地を食べ物を求めてさすらったことがあるので、それの日本版を目指したのである。 読んでもらえばわかるが、結果は惨憺たるものだった。その惨憺たる、という意味は少々複雑で、事態は思いがけない展開を見せ、われわれは全員で堕落していったのである。 ひとつだけこの本で特筆すべきは、25年ぶりのまるまる一冊のカキオロシというところで、ダイコンオロシに迫る偉業を成し遂げたという点だ。

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