出版社:講談社

文庫

発行年月日:2011年09月15日

椎名誠 自著を語る

2004年から雑誌『自遊人』で新連載が始まった。日本のお祭りを取材して歩こうという大雑把なテーマだ。お祭り紀行はモノカキになった当初、角川の雑誌で十か月足らず試みたことがあり、ぼくの中で全国のお祭りを取材するという思いは昔から強くあったものだったから、この企画は大乗り気だった。しかも今回は一人旅ではなく三、四人のチームで行けるという。切符を自分で買わなくてもすむ、酔っていても車の運転が交代できるという優遇措置だ。しかしお祭りは何でもいいというわけではなく、なんだこりゃ、ありゃ、と誰しも一瞬のけぞるような笑えるもの、へんてこなもの、不思議なもの、というターゲットの制約がついた。そういうお祭りを全国各地から探す作業はいつも新宿の居酒屋でやっていたが、その段階からすでに楽しい気配にあふれていて、この連載シリーズはとにかく取材する我々も全面的おもしろ気分で終始した。最終的にはそこで撮った写真を六本木ヒルズの大きな写真展会場のフォトギャラリーで展示するイベントとなり、離れ島旅にしても、へんてこな食い物紀行にしても、麺類紀行にしても、この手の取材ものはどうも自分の行動様式にどこかいつもぴったり当てはまるんだなということを確信した一冊でもある。

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