出版社:文藝春秋

発行年月日:2008年11月30日

椎名誠 自著を語る

純文学誌『文學界』に私小説と、ぼくのいう超常小説(SF)を交互に連載してきた。この本は、どこか自分の中で満を持して書き始めたところがある。なんとなく次に力を込めて書くSFはこの物語だな、と1,2年前から折に触れて考えていたからだ。この連載小説を書く半年ほど前に初めてチベットに行ったことも、ストーリーの舞台づくりに大きく関係している。チベットの奥地は、世界のけっこうたくさんの辺境地に行ったぼくにとっても、思いもよらない見たこともないような風景や現象があって、しばしば圧倒される思いだった。移動しながら4500メートルほどの高度から雲を見下ろし、この小説のストーリーなどをぼんやり考えていた。この本の帯には編集者が「シーナがSFに帰ってきた!『アド・バード』から19年、誰も見たことがない世界への旅」と書いてくれている。そういう意味では作家としてのぼくのその当時の思いを上手にとらえてくれていると思い、その感覚に感謝している。(2011年 椎名誠 語りおろし)

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ひとつ目女

出版社:文藝春秋

発行年月日:2011/11/10

文庫

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