出版社:新潮社

文庫

発行年月日:2008年05月01日

椎名誠 自著を語る

かつて『全日本食えばわかる図鑑』というエッセイを書いたことがある。単行本にもなった。この本はそれをもじって新潮社の編集者がこのようなタイトルにしたのだ。「小説新潮」の連載がベースになっている。日本の各地にあるあまり普通の人は食べない、しかし、現地の人は郷土食として食べている一般的でない食べ物を、挑戦的に食っていくという体当たりルポだ。もっともつらかったのは、エラコというゴカイの一種で、東北地方のある海岸地帯ではこれを実際に食べていると聞き挑戦したのだが、ゴカイはぼくにとっては絶叫するほど気味の悪い生き物だから、それを食うなどということは精神的な自殺行為に近い。しかしなりゆき上、引き下がることができず、ちゃんと食べたが、くやしいので同行している編集者にも義務として同じように食わせた。食えば食えるのだった。(2011年 椎名誠 語りおろし)

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