出版社:新潮社

文庫

発行年月日:2006年12月01日

椎名誠 自著を語る

この頃、以前書いたように、新潮社と講談社の二つの媒体を舞台に、海や島を訪ねる旅を長期に続けていた。その折、西表島のハエミダというところで、いわゆるホームレスの人たちが南の浜のアダンの木の森にたくさん住んでいるのと出会った。南島でのホームレスの生活はぼくがしょっちゅうやっているキャンプ旅の延長のようで、なかなか魅力的に思えた。彼らとも親しくなり、いろんな話を聞き、そのサバイバル技術などもあちこちで見せてもらった。その時の強い印象を元に、自分がホームレスとなってそういう生活をしていったらどうなるか、というのがこの小説を書くモチベーションだった。 経験したものを小説に書いていくというのはかなり楽なもので、この連載はあまり苦しまずに地のままで書いていけばよかった。その意味では成功した部類だろうと思う。 (2011年 椎名誠 語りおろし)

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