出版社:小学館

文庫

発行年月日:2006年10月01日

椎名誠 自著を語る

ぼくがモノカキになったばかりの頃に出会った編集者は、その後もかなり長く付き合っている人が大勢いるが、そのうちのひとり、小学館の高橋攻さんがもうじき定年を迎えることになった。高橋さんとは何冊もの本を作ったが、その最後の一冊をまたやりましょう、ということになり、当時、アウンサンスーチーさんと「ビルマの竪琴」ぐらいしか知識がなかったミャンマーに潜入することになった。一か月足らずの旅だったが、ほとんど知識のない場所をその日暮らしのようにして旅していくのでなかなか刺激に満ちて痛快だった。この少し前にアメリカの同時多発テロ9.11事件が起きていたわけだが、驚いたことにミャンマーの国民はそのことをだれも知らなかった。軍事国家の情報統制の恐ろしさを身をもって知ったという驚きをこの本の中でも最初に書いている。(2011年 椎名誠 語りおろし)

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