出版社:本の雑誌社

発行年月日:2003年04月20日

椎名誠 自著を語る

おかしなタイトルである。いっぽん海という言葉については本文で書いている。ある編集者と新しい企画について話していたとき、日本の辺境といわれるようなところを歩き回り、かなり大胆なその土地の未来を予測するようなシリーズにしませんかという話になった。ぼくは大いに乗り気になり、まず最初に、フォッサマグナあたりを、歩いていくのは大変だから車で横断してみたい、といった。日本の遠い未来に何か大きな地殻変動があったときいちばん折れやすいのがこのフォッサマグナではないかと思ったのだ。そこがたとえば100キロぐらいまっすぐ離れてしまったとするとそれは海になる。きわめて細長い一本の海だから、それはいっぽん海だ、と編集者と二人で、おおそれだそれだ、と握手した記憶がある。しかし理由は忘れてしまったけれどもその企画はその話を一回しただけで流れてしまった。まあその名残がこういう不思議なタイトルになって残っているのである。中身は「本の雑誌」に連載している今月のおはなしをまとめたもの。(2011年 椎名誠 語りおろし)

b0458

いっぽん海まっぷたつ

出版社:角川書店

発行年月日:2014/2/25

文庫(『いっぽん海ヘビトンボ漂読記』の改題・文庫化)

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