出版社:集英社

文庫

発行年月日:2001年02月25日

椎名誠 自著を語る

これは日記である。日記を一年なり二年なりまとめて本にするという手法はポピュラーにあるが、ぼくはあまりやらなかった。この本の元は、集英社の「青春と読書」であり、この雑誌に『岳物語』を書いて本格的な作家への道を進んだという経緯もあるから、「青春と読書」はその当時「本の雑誌」と並んでぼくのホームグラウンドという気分をもっている雑誌だった。まあ日記だから大テーマというものはなく、この前もそれから後も、あいかわらず世界各国を含めて日本のあちこち、われながら笑ってしまうくらいの激しさで移動し行動していたから、日記としては変化があってよかったのだろうと思う。問題はどんなタイトルをつけるか、というところだったが、この当時からぼくはなぜか魚に足をつけて歩いているヘンテコな絵を描くのが好きで、まあ自分をそのヘンテコな歩く魚になぞらえ、あちこちで吹いてくる風にいつも笑われていたというような意図でつけたのではないかと思う。 (2011年 椎名誠 語りおろし)

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