出版社:新潮社

文庫

発行年月日:1995年07月01日

椎名誠 自著を語る

こうして見ると、この頃のぼくの本というのは表紙が派手でものすごいものばかりですね(笑)。この本の伊藤さんは、ぼくが気に入って自分から編集者に紹介した人です。当時は「スーパーエッセイ」という『さらば国分寺書店のオババ』を出したときに勝手につけた呼称がじわじわと浸透しつつあった頃で、新宿の紀伊國屋書店には「スーパーエッセイ・コーナー」なんてものができたりしていました。これもいわば寄せ集めのエッセイ集で、サラリーマン時代に興味を持っていたことを書いた雑貨店のような本ですね。コロッケパンを買うときに「コロッケにソースかけてね、ダボダボにしてね」と注文していたのがタイトルの由来です。これはいかにも自分でつけたタイトルのようで、自分でもずいぶん長い間そう思っていたのですが、それは間違い。実は、表題作となったエッセイが雑誌に掲載されたとき、担当編集者だった講談社の岡さんがつけてくれたものでした。それが、とても面白いタイトルだったので、本にするときそのまま使った、というのが本当です。ずっとそのことを忘れていたのですが、なぜか最近になって急に思い出しました。 (椎名誠 新潮文庫 1996年『自走式漂流記1944〜1996』より)

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