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出版社:集英社

文庫

発行年月日:1995年06月25日

椎名誠 自著を語る

のちのち映画『白い馬』をつくるきっかけとなったモンゴルへの旅の記録です。『バッカス』という雑誌の取材で行った旅でした。当時は『ガクの冒険』をつくったばかりで、自分が今のように映画をつくりつづけるかどうかもわからなかったし、ましてモンゴルを舞台に現地の俳優やスタッフと一緒に映画を撮ることになるとは夢にも思っていませんでした。この旅ですっかりモンゴルの魅力にとりつかれてしまったぼくは、その後何度もモンゴルを訪れるようになって、次第に映画の構想がふくらんできました。このときの旅がなければ、すべてがまったく違った状況になっていたと思います。「草の海」というタイトルは初めてモンゴルの大草原を目にしたときの印象をそのまま言葉にしたもので、今こうしてあらためて見ても、いいタイトルだと思いますね、地平線まで続くほどの広さといい、まさしく「海」なんですよ。一つの旅によって、その後の人生がこれほどまでに大きく変わってしまったのだから、ぼくにとっては重要な意味を持つ旅となりましたね。(椎名誠 新潮文庫 1996年『自走式漂流記1944〜1996』より)

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