出版社:集英社

文庫

発行年月日:1993年05月25日

椎名誠 自著を語る

ぼくにとって最初の雑誌連載である「どくだみ光線」(『ブルータス』)をまとめたものです。これもスーパーエッセイ路線の中の一つですね。また、この本でぼくは初めて沢野ひとしときちんとした形で組んで仕事をしました。今思うと、この頃からすでに彼の異常画の雰囲気は芽生えていましたね。というよりも、この時期が一番、荒々しいパワーというか力強さに満ちていたような気がします。だいたい何が描いてあるのか、わけがわからない。まあ、今もよくわからないことが多いけど(笑)。ぼくも沢野も若かったということですね。しかし沢野の絵というのは、いつ見ても不思議な絵ですよ。ぼくは高校時代からもう三十年以上、彼とつきあってきて、その間に彼が描いた絵もずいぶんたくさん見てきたけれど、ぼくなんかから見るとほとんどタッチが変わっていないんです。昔、教科書の写真なんかに落書きをしていたときも、今のイラストもほぼ同じ感覚で書いているとしか思えない。それでイラストレーターになっちゃたんだから、すごいことというか不思議なことというか……そういうことをいうと本人はものすごく怒りますけどね(笑)。 (椎名誠 新潮文庫 1996年『自走式漂流記1944〜1996』より)

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