出版社:集英社

文庫(『シベリア夢幻』の改題・文庫化)

発行年月日:1991年03月25日

椎名誠 自著を語る

旅の記録を写真という形で出した、初めての作品。当時の出版社は(今だってそうかもしれませんが)写真集をなかなか出してくれませんでしたね。文章がなければだめだとか、いろいろな制約があった頃です。この本の情報センター版の判型はぼくの大好きな判型で、正方形に近い形が気に入っています。これを出してから徐々に、ぼくは写真ものの本を出すことが増えていくのですが、その都度、これと同じ形にしたいと思いながら諸般の事情で果たせないでいます。残念ではありますが、書店に置いたときに目立たないとか、いろんな問題があるようですね。この頃、ぼくと星山さんとはお互いに何でも思ったことはいいあえる関係になっていたので、ぼくは著者として「こうしたい」という希望は包み隠さずに言っていました。彼もそれにできる限りこたえてくれたので、感謝しています。この本も彼のおかげで実現したようなものです。まあ、大出版社では無理だったでしょうね。小さいところなりの良さが出ている本だと思います。この旅自体も、思い出深いものの一つです。なにしろ睫毛が凍ってまばたきがうまくできなくなったり、未体験の状況を次々に経験しましたから。これでどんなところでも大丈夫だという自信がつきました。(椎名誠 新潮文庫 1996年『自走式漂流記1944〜1996』より)

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