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出版社:集英社

発行年月日:2017年07月30日

椎名誠 自著を語る

ぼくがかなり早い時期に書きだした小説は日本文学の伝統とよくいわれるような“私小説”だった。書いたのは30代の終わりの頃で、モノカキになってまだ4、5年だったから、それが私小説であるかなどと考えもせずに締め切りに追われて瞬間的に題材に困っていると、目の前でちょうどいい小説的素材が動きまわっていた。泥だらけになっているぼくの息子、岳くんである。そこで始まったのが『岳物語』だった。単発として書いたのだが、編集者から連載で行きましょう、と言われ、ずるずる書いていったら『岳物語』という一冊になり、それが『続 岳物語』に続き、以来、断続的ながらずっとシリーズのようになっていった。この本は、あるとき、ぼくが書いた岳少年の頃に、ぼく自身はどこで何をして、何をどう思っていたかが気になり書き出したのである。最後に自分自身にブーメランのように私小説が戻ってきたという感じだ。

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家族のあしあと

出版社:集英社

発行年月日:2020/05/25

文庫

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